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2019年6月 5日 (水)

5月分②:大哺乳類展2

5月30日 「大哺乳類展2」(国立科学博物館)
骨、骨、骨(骨格標本、ね)に圧倒される。
190605mammalian1 まずは巨大なアフリカゾウが堂々と私たちを迎えてくれる。骨格標本ではあるが、全身骨格だけにその大きさがナマで感じられ、迫ってくる。しかもアフリカゾウの上にはシロナガスクジラの下あごが吊り下げられている。その長さたるや、ゾウの体長に匹敵するほど。この2点で心はもうすっかり摑まれた。
陸に棲む哺乳類最大のアフリカゾウは体高3メートルもある。その一方でオナガテンレックは体長10cmに満たない哺乳類最小クラス。どちらも共通の祖先をもつアフリカ獣類なんだそうだ。そして人魚とも言われるジュゴンも同じ仲間なんだって!! 生物の不思議。アフリカ獣は肋骨が多いという特徴があるそうだ。
今回のテーマは「生き残り作戦」。ロコモーション(移動運動)を中心にして、食べる、繁殖する・育てるに関するそれぞれの動物の違いが解説されている。
陸上で一番足の速い哺乳類がチーターであることは知られているが、その速さの秘密というか、疾走が3D骨格モデル連続画像で示されている。チーターは速いだけでなく、急に向きを変える能力も発達させた。その仕組みはわかっていないそうだ。しかしチーターのスプリント力は特別なもので、同じ肉食獣でもトラなどは脊柱を湾曲させた屈伸運動で瞬発力を発揮し獲物にとびかかる。追われる立場の草食獣は脊柱をほとんど動かさず頭から首の上下運動で加速する。チーターは短距離選手だから持久力は不足している、追われている動物は長距離頑張れば逃げ切れると聞いたことがある。オオカミは脊柱を支点にして四肢を動かし、持久走に優れるとのことだが、すなわち脊柱を動かさない方が持久力が保てるということかしら。
先日の「チコちゃん」で、チーターの次に速い動物はプロングホーン(この名前は初めて聞いた)のだと紹介していたが、そのプロングホーンを展示の中に発見!! 展示では2番目に速いとは書いていなかったが、最高速度は時速100km(チーターは秒速29m、ってことは時速104km超えだからやはりプロングホーンはチーターの次なのかも)、歩幅は8mで跳ねるように走るそうだ。
以上は地上の動物たちの高速走行・走行について興味深かったことだが、ロコモーションはまず「立つ」ことから始まり、「歩く」、そして跳躍、樹上移動(シロテナガザルの樹上移動の3D骨格モデル連続画像が面白い)、滑空、飛翔といった方法がある。立ち方、歩き方にもいろいろな違いがあって大変興味深いのだが、長くなるから触れない。掘削なんていう方法もある。モグラとか。これもTV(「サイエンスゼロ」)で見たハダカデバネズミも掘削する哺乳類である。ネズミだからちょっとぞっとするんだが(都会のど真ん中でドブネズミが道の際を疾走するのを見たことがある)、不老不死、不思議な社会性を知った後だと親しみが湧く。

哺乳類は陸上だけで暮らしているわけではない。水の哺乳類たち。鯨類(クジラ、イルカなど)は流線型の身体で胸ビレ方向をコントロール、尾ビレを背腹に動かして泳ぐ。背ビレが直進性を高める。ラッコも後肢と体幹を背腹に動かして泳ぐということで、鯨類と同じ遊泳方法なのだそうだ。その一生を水中で過ごすという共通点が共通の泳ぎ方を獲得させたようだ。鰭脚類(アザラシ、アシカ、セイウチなど)も水の抵抗を軽減するために紡錘形の体形をしているが、よく曲がる脊柱とヒレ状の四肢で進んだり方向転換をする。
哺乳類って本当に幅広い、そして生物って環境に応じてうまくできているんだなあとあらためて感心する。巨大な骨格たちに目がいきがちだが、こういう違いを知るのは面白い。
ロコモーションを勉強しながら会場中央に進んでくると、おお、そこには30mにわたる哺乳類たちの大行進が!! これは骨格ではなく剥製。私は日本館だったか地球館だったかで何度か見たことがあるのでさっと流したが、ここでは原始的な動物から始まって約200種類の哺乳類が分類ごとに並んでいた。小さい動物も巨大な動物も仲良く一堂に。多くの人たちの興味を集めており、みんな名前と写真の入ったプレートを見ながら楽しそうに剥製と一致させていた。
そして頭上を見上げればマッコウクジラが飛んでいた(吊り展示)。頭部と半身模型付きの実物大骨格だ。床上やケースでの展示にも苦労があったことが偲ばれるが、クジラ。イルカ、シャチなど吊り展示はどれだけ大変だったろう。とりわけこの巨大なマッコウクジラをこうして見ることができるのは、複雑な頭部構造を可視化したいという研究者たちの熱意のおかげである。
190605mammalian2 そしてまた面白かったのが「食べる」のコーナーにおけるシャチの頭骨とミンククジラの頭骨の動く展示である。シャチはハクジラの仲間、ミンククジラはヒゲクジラの仲間で、食べ方が異なる。シャチは鋭い歯(生涯生え変わらないんだそうだ)で餌を捕え、ミンククジラは下あごを大きく外側に回転させて餌の群れを海水ごと取り込み、ヒゲ板で小魚やプランクトンを漉して食べる。この骨格の動きが確認できる。たしかにシャチはただ口を開いて閉じるだけ(写真・上)。ミンククジラは下あごが外側にはずれて口を大きく開ける(写真・下)。そういえばピノキオとゼペットじいさんが呑みこまれたのはクジラだったかしら。
歯ではこれもNHKの「人類誕生」(去年の録画をつい最近見た。それも第1回しか録画していなか190605mammalian3 った)で見たチンパンジーの歯と最古の人類ラミダスの歯の違いを思い出した。ラミダスはオス同士でメスを争う必要がなかったためチンパンジーに比べて犬歯が小さく変化しているという。ラミダスはもちろん展示がないが、チンパンジーの犬歯はたしかに鋭い。歯は当然のことながら、その動物が何を食べるかによって形態が異なる。
長くなってくたびれたのでここからは端折ります。この後、消化管、生殖、子育てと続く。哺乳類は一般にメスだけが子育てを行うそうだが、母親は子供たちに食べさせる物を常に求めなくてはならない。その間子供たちだけで自分を守るための作戦の一つが保護色である。よくできている、生物というのは。
さて、最後にヒトの生き残り作戦。身体能力では哺乳類の中で劣っている人間だが、ヒトは脳を発達させて生き残ってきた。世界でもっとも繁栄している哺乳類のひとつが人間だ。しかし、人間は脳をどのように使ってきたのだろう。欲望、嫉妬、憎しみ等々、こういうものが争いを起こす。また人間社会における虐待の多さに胸がかきむしられる昨今、人間の子育て、親としての愛情をあらためて考えさせられた。
第二会場では2018年夏に鎌倉由比ヶ浜海岸に漂着したシロナガスクジラの赤ちゃんの研究結果が発表されていた。遺伝子とか難しいことはわからないが、胃の中から出てきたビニール片、また漂着鯨類の胃から発見されたプラゴミは衝撃であった。プラスチック等による海洋汚染は現在大きな問題になっており、プラスチック製品を減らす方向に向かっているが、人間はその脳をどう使うべきか、ここでも考えさせられた。


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