« 「ラファエル前派の軌跡」 | トップページ | 六月歌舞伎鑑賞教室:「歌舞伎のみかた」「神霊矢口渡」 »

2019年6月17日 (月)

モネ「睡蓮 柳の反映」は修復された原画もデジタル推定復元も必見:松方コレクション展

610日 「松方コレクション展」内覧会(国立西洋美術館)
内覧会は非常に混雑するので、後日ゆっくり見ることにして、今回はざっと流すにとどめた。
目玉のひとつであるモネ「睡蓮 柳の反映」のデジタル復元パネルは新館地下におりる階段下にあった。通常、展覧会関連のビデオモニターがあるあたりだろうか。その裏にクラウドファンディング協力者の名前一覧が掲示されていた。
デジタル復元ってどんな意味があるのか、そんなにお金のかかるものなのか、よく理解できないでいたが、16日放送のNHKスペシャル「モネ 睡蓮 よみがえる“奇跡の一枚”」を見て納得した。
モネ「睡蓮 柳の反映」は松方幸次郎がモネ自身から購入したものだが(モネは大切にしていたこの絵を松方だからこそ手放したそうだ)、第二次大戦が勃発し、パリ郊外に疎開することになった。しかし疎開先は湿気が多いなど絵画の保管には適さない環境で、絵は著しく損傷した。そのため戦後、絵画としての価値なしとみなされ、長いこと忘れられた存在であった。それが2016年、ルーヴル美術館で60年ぶりに発見され、松方家から西美に寄贈された。
しかし絵の損傷は激しく、上半分が欠損しており、下半分もぼろぼろの状態であった。この下半分を修復したオリジナルが展覧会最後に展示されている。内覧会で見た時はどうして全体を修復しないのだろう、これから上半分にも手をつけるのかしら、と思ったが、完全に欠損している部分に後世の者が手を入れたらそれはモネの作品ではなくなってしまうと言われ、なるほどそうか、と納得した。下半分は、まさに最大級の困難な修復、ぼろぼろの状態から見事に修復されたことに大いなる感銘を受けた。
では、上半分はどんな絵だったのだろう。それをデジタル復元で見ることができる。4億画素(!!)の超高精細カメラとAIを使っての復元であるが、これにはフランスに残っていたこの絵を撮影したネガが貢献した。このネガが残っていなければ復元は不可能だったそうだ。ネガとモネの作品多数をデータ化して合成し、AIは100万回推測を繰り返して上半分の色が決定された。しかし中間報告でこの色には下半分との違和感があると疑問が呈される。これまで参考にした絵はモネの若い時の作品が多かったため、今度はこの絵とほぼ同年代に描かれたものをデータ化する。AIの学習は330万回を超えたそうだ。そして色のトーンは再現された。
しかし担当者は満足しない。モネの生き生きした筆使いが再現できていないのだ。AIだと写真に色をつけたという程度になってしまうのだそうだ。それからふたたび筆使い再現への努力が始まり、ついにデジタル復元は完成。
あくまで推定復元ではあるが、おそらくモネの原画もこうであったろうと納得できる。色を再現するだけでも大変な作業だったのに、筆使いまでデジタルで再現する!! 修復にしてもデジタル復元にしても、最新の技術はもちろんだが、プラス人の感性、熱意、努力がなければ達成できなかっただろうと、その過程に尽力された方々に大いに感銘を受けた。次に見る時はこの絵に対する自分の思いが全然違うだろう。
欲を言えば、原画とデジタル復元パネルが並べて展示されていればなあ。

ロセッティ「愛の杯」はついこの前三菱一号館で見てきた「ウェヌス・ウェルティコルディア」と同じ顔だったからすぐにわかった(素人はちょっとわかった気になるとすぐにつけ上がってしまう)。ミレイの作品(「あひるの子」)もあった。松方幸次郎、ラファエル前派も押さえているんだなあ。マティス「長椅子に座る女」を見て、私はマティスを好きかもしれないと今ごろ気がついた。
ところで、国立西洋美術館は1959年6月10日に開館した。まさにこの内覧会の60年前。開館時のニュース映像も流れていた。

さっと流して見た程度であるが、展示は充実しています。会期が9月23日までなのでまたぐずぐずして滑り込みにならないよう、早めに見に行きたいと思っている。


 

|

« 「ラファエル前派の軌跡」 | トップページ | 六月歌舞伎鑑賞教室:「歌舞伎のみかた」「神霊矢口渡」 »

展覧会」カテゴリの記事

コメント

鬼が笑うところですが、来年三月、明治座で中村屋兄弟で花形歌舞伎がかかりますね。

6月は身内に不幸があり、23日の昼夜の観劇をパスすることに。
夜の部は月初に一回観ているのですが、昼の部の松嶋屋の「封印切」は久しぶりだっただけに残念です。。。

29日の文学座「ガラスの動物園」、30日の新国立劇場「オレステイア」を観るか、もう少し喪に服するか悩んでいます。(チケットも無駄にしたくないし。。。)

7月は子供のためのシェイクスピア「じゃじゃ馬ならし」を取りました。SwingingFujisan様は行かれますか?

あとこれも少し先ですが、12月公演予定の花組芝居の「義経千本櫻」の通し上演が楽しみです。
(「忠臣蔵」「菅原」の通しも良かったので。期待大です。)

「化粧二題」もある意味新鮮でした。
母版と違い、今回の母+息子版がオリジナルなんですね。
なので母版は結末が違います。「二題」の方は昔観ているはずですが記憶がぶっとんでいて、あぁこういう感じなのかと思うところが多々ありましたね。
練り直しされて、完成度の非常に高い渡辺美佐子版も勿論良いですが、このバトン形式の歌舞伎でいう鸚鵡式のお芝居も井上さんらしい趣向で面白かったです。

こまつ座を観た日は、夜はラッパ屋の公演も観たのでが、こちらも落ち目の新劇劇団が2.5次元のミュージカルに挑戦するという内容で、演劇人の矜持やら芝居への思いが迸る秀作でした。私と同世代の役者が頑張ってくれているのも励みになります!

投稿: うかれ坊主 | 2019年6月23日 (日) 08時41分

うかれ坊主様
御身内にご不幸があったとのこと、お悔やみ申し上げます。
亡くなった方への思いと観劇への思いが交錯するお気持ち、わかります。おつらいでしょうね。

子供のためのシェイクスピアはチケットは取っておりません。先の予定が立たないため、とにかく今は歌舞伎最優先、それでもパスせざるを得ない状況になることもあるので。「じゃじゃ馬ならし」は見たいのですが、私の場合、自分の中で<諦めよう>と決めると案外スパッと諦められるものです。それでも「化粧」はいつまでも残念な思いが強かったです。

花組が通しを上演するのは存じませんでした。興味深いお芝居がたくさんありますね~。

3月の明治座は行かれるかどうかわかりませんが、楽しみです。

今は観劇のかわりに美術鑑賞になってしまっています。こちらは行かれる日に行けばいいので。

いただいたコメントの公開が遅くなって申し訳ありませんでした。

投稿: SwingingFujisan | 2019年6月25日 (火) 11時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「ラファエル前派の軌跡」 | トップページ | 六月歌舞伎鑑賞教室:「歌舞伎のみかた」「神霊矢口渡」 »