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2019年6月26日 (水)

六月歌舞伎座昼の部:「寿式三番叟」「女車引」「石切梶原」「封印切」

6月21日 六月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
最近、歌舞伎のリピートをしなくなったが(今月夜の部はリピートする)、昼の部を見たら、もう一度見たくなってしまった。
「寿式三番叟」
幕が開くと、囃子方が頭を垂れている。翁、千歳、三番叟が五色幕から登場。三番叟も一緒にいるせいか、厳かさは厳かさなりに、こちらの緊張感が少し和らぐような感じがした。松江さん(千歳)は久々の大きな役と言ったら失礼だが、本格的な舞を見たのは初めてかかなり久しぶりな気がする。東蔵さんは最後の袖巻きで袖が烏帽子に引っかかってなかなか取れず、はらはらした。しかし東蔵さん、慌てず格式高い翁を見せてくれたのはさすがである。各お家の親子共演は毎月のことながら、今月はとくにその印象が強い。東蔵さんと松江さんのがっつり共演は初めて?
翁と千歳の厳かな舞が終わると背景が松から松竹梅に変わり、三番叟の舞となる。足を踏み鳴らし、激しく踊る幸四郎さんと松也さん。松也さんはキレのきれいさで幸四郎さんにちょっと劣る感じがした(とくに、巻いた袖をぱっと両腕を開いて戻す動き)。またダイナミックに舞おうとするあまりか、動きが大きくなりすぎて雑に見えることもあったが、後半はあまり気にならなくなった。それにしても、この三番叟は重労働だわ。
「女車引」
初めて見るので、舞踊とは知らなかった。雀右衛門さん(春)と一緒に花道に登場した児太郎さん(八重)の手の動きがとてもきれいで、ずっと手から目が離れなかった。そして最後の方で児太郎さんの手ってとても大きいんじゃないかと気がついた。大きい手を女性らしく美しく見せている。姿勢でも児太郎さんが一番きつい体勢を取っていながら美しい(そのように見えたが、もちろん雀右衛門さんも千代の魁春さんも厳しい体勢をそう感じさせないようにしているのかもしれない)。児太郎さん、先輩2人にヒケを取っていない、本当に成長したなと思った。
雀右衛門さんは姉さんらしく児太郎さんを包んでいた。
魁春さんには春・八重と車を引きあう厳しさが見られた。でもその後の賀の祝いのお料理には和んだ。3人は夫たちとは違って仲よしなんだものね。3人、ニンに合っていた。

「梶原平三誉石切」
播磨屋勢揃い。実の親子である歌六・米吉が父娘に、又五郎・歌昇が兄弟に、ということで、ミーハー心は盛り上がった。
歌昇さん(俣野)はベリベリ感が見事。大庭はこれまでもっと憎らしい印象だったが、又五郎さんの大庭は冷静で、すぐにアツくなる弟を諌めたりするところに深みを感じた。
歌六さん(六郎太夫)からは娘を思う父親の心がしみじみと伝わってきた。私も父に助けられたことがあると思い出して、泣けた。米吉さんは父の二つ胴を知った時の衝撃や悲しみが教科書どおりな感じで、感情のこめ方がもう一つな気がした。それに夫がいるようには見えなかった。でも可憐でニンは合っているし、役を重ねていけばいい梢になるだろう。梢って案外難しい役なんだなと思った。当身で倒れた姿勢はつらそう。頭をあげたまま横になっている姿勢はいつも大変だなあと役者さんが気の毒になる。
吉右衛門さんはとにかくカッコいい。二つ胴にわざと失敗して六郎太夫の方を見てにっこりし、大庭の存在はっと思い出したかのように厳しい顔になる。俣野との遣り取りからずっと梶原の老獪さ、大きさを見てきたが、ここでそれがピークに達した。楽しくて心が弾んだ。「切り手も切り手」「剣も剣」(刀も刀だったかしら?)はこちらもぴょんぴょんしたくなるよう。
石切の場面では、ふっと團十郎さんの姿が思い出された。
錦之助さんがわずか1分ほどの登場ながら存在感を示した。吉之丞さんの酒尽くしはわかりやすくて面白かった。
「恋飛脚大和往来」
前半の仁左様のアホ可愛らしさが後半に効いてくる。この人だから、男の意地とか言っちゃって八右衛門の意地悪に挑発されてしまうんだなぁ。八右衛門の悪口を二階で聞いて怒りをつのらせていく様が背中の演技ではっきりわかって、いつもは忠兵衛をバカな男だと思うのに、今回はその気持ちがわからないでもなく、忠兵衛に哀れさを覚えた。忠兵衛の手からじゃらじゃらこぼれる小判、この時の忠兵衛の心境や、いかに。私にはその音が死への道行の前奏曲のように聞こえた。見送ると言うおえんにそれには及ばないときっぱり断る忠兵衛には覚悟を決めた男の強さもあり、またここでも哀れであった。
孝太郎さんは最初に出てきた時意外と華が感じられなかったが、それが逆に「新口村」の実直で優しい梅川に通じて、好感がもてた。
おえんは秀太郎さんを措いていないだろう。しかし、おえんも治右衛門(彌十郎)もいい人たちには違いないが、所詮は金が物を言う世界なんだとあらためて身に沁みた。
愛之助さんはやりすぎじゃないかと思うくらい憎らしかった。これまでは忠兵衛より八右衛門のほうが素敵に見えることが多かったのに、今回の八右衛門は本当にイヤな男だった(「なつぞら」風に言えば「やなやつ」)。この男、自分のせいで2人が命を捨てることになった悔いなど絶対に覚えないだろうな。
あまり好きになれない演目ではあるが、今回はかなり面白いと思って見た。
<上演時間>「寿式三番叟」30分(11:00~11:30)幕間15分、「女車引」18分(11:45~12:03)、幕間30分、「石切梶原」81分(12:33~13:54)、幕間20分、「封印切」79分(14:14~15:33)

 

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コメント

やっぱり観たかったです。成駒屋は偶然にも切れてしまう悲劇性が見どころですが、松嶋屋は思い余って自ら切る芝居だったと思います。『切り』か『切れ』か。それぞれ違っていて面白いところです。装置も違いますよね。八右衛門は近松の原作では、忠告役というか、情理をふまえた『いい役』になっています。かなり昔ですが近松座で原作通りを観た事があります。

投稿: うかれ坊主 | 2019年6月27日 (木) 06時36分

うかれ坊主様
そうですよね、ご覧になりたかったですよね。わかります。
松嶋屋さんは、おっしゃる通り、自ら切ります。意志が感じられるだけに、ただの色男と片付けられないように思いました。
今回の愛之助さんの八右衛門は、私には本当に意地悪に感じられました。原作では決して意地悪じゃないのですね~。

毎度毎度公開が遅くてごめんなさい。

投稿: SwingingFujisan | 2019年6月28日 (金) 21時19分

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