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2019年8月31日 (土)

八月歌舞伎座千穐楽第三部:「新版 雪之丞変化」

8月27日八月納涼歌舞伎千穐楽第三部(歌舞伎座)
「雪之丞変化」はオリジナルを知らないし、名古屋で見た二十一世紀歌舞伎組の「雪之丞」も、ほとんど忘れてしまった(段治郎さんがバイクに乗っていたような…?)
「新版 雪之丞変化」
場内が暗くなって、大きなスクリーンに坂東玉三郎、中村七之助、市川中車の文字が順番に映し出される。そして玉三郎さんの政岡が。三階からはスクリーン上方は見えず、役者さんの首から下しか見えないことがしばしば。スクリーンと舞台の実演が交互にだったり交絡だったりしながら物語は進んでいく。
玉三郎さんらしいなあ、玉三郎さんがやりたかったことなんだろうなあと思いつつ見る。
劇中劇の先代萩で八汐が「政岡覚悟」と懐剣を振りかざす場面。八汐が第一部で政岡をやっていた七之助さん(「雪之丞変化」での役名は秋空星三郎)だから、このつかみからして引き込まれる。しかし玉三郎さん(中村雪太郎)の政岡はこれに対し「親の仇」と言ってしまう。一瞬ドキっとしたら七之助さんが小声で指摘し、玉三郎さんが言い直す。動揺する玉さま。七之助八汐は自ら剣を胸深く引き込む。何も知らないで見たから、まさかと思いつつもドキドキしたわ、この場面。雪太郎が動揺した事情は後になってわかる。
二人の場面が終わると中車さんの仁木弾正が面灯り灯りに前後を照らされ、ゆっくりゆっくり花道を引っこむ。その際にもスクリーンにその姿が映し出される。スクリーンの仁木は何重にもなって。第一部の「伽羅先代萩」では影があいまいになって不気味さが感じられなかったが、こちらは影がしっかりしていて、スクリーンの映像とも相俟って不気味な点もよかった。
全体に舞台では2人芝居が多いように思った。割とぷつんぷつんと次の場面に移るのだが、凝った背景や大道具もなく、ほとんどが剥きだしの舞台で演じられるあたり、現代劇のような印象もあった。でもスクリーンの多用も含め、歌舞伎としての違和感はあまりなかった。
ただ、仇討にはそれなりの苦労があったはずなのに、偶然の幸運が重なったり、剣術の厳しい稽古が省かれたりしていて、物足りなさを覚えたが、時間の制約上しかたなかったのかしら。
一方で、玉さまの踊りが見られたし(スクリーンで鷺娘、京鹿子娘道成寺など)、玉・七で助六、籠釣瓶のほんの一瞬、楽屋落ち(鰯売、四谷怪談など)があったり楽しい部分も多々あった(楽しいけれど、勘三郎さんのことをしんみり思いもした)。

玉さまに指導をうけた中車さんが雪之丞の師匠だったり、七之助さんが先輩役者だったりという配役が面白かった。
中車さんは中村菊之丞、孤軒老師、土部三斎、盗賊闇太郎、脇田一松斎の五役を演じたが、第二部の鎌川霧蔵も含めて、歌舞伎にすっかり馴染んだと思った。見得も声も歌舞伎になっている。映画にテレビ、カマキリ先生、バラエティと多忙な中でよくこれだけの精進をしたものだと感銘を受けた。

狂言回し的な秋空鈴虫役で音之助さんが面白い味を出していた。ていねいで行儀のよいコミカルさ、大抜擢だと思うがよく応えていたと思う。この役がやゑ六さんとダブルキャストであることは知らなかった(やゑ六さんが9~13日、19~22日、音之助さんが14~18日、23~27日)。

雪之丞は仇討に成功した後、自分の生き方に疑問を持つ。雪之丞の問いはそのまま玉さまの問いなのであろうか。問いかけながら、玉さまは自分の価値をあらためて見出しているのではないだろうか。

最後に「元禄花見踊」をもってきたのは、それを形にしたのだろうか。

<上演時間>「第一幕」68分(16:30~17:38)、幕間20分、「第二幕」50分(19:58~20:48)

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コメント

こんにちわ秋の気配がして来ましたね。。8月22日26日に雪之丞変化、千秋楽27日に一部二部を観ました。雪之丞は猿之助さんの舞台とは随分違って出演者も少なく先輩役者である星三郎への思いは早世した勘三郎さんへの思いでしょうか。先代萩は千松への嘆きが今まで観た中では激しかった様に思われました。弥次喜多は色々な歌舞伎のパロディが面白かったです。来年はオリンピックのため別演目だそうです。弥次喜多は一応今回で終了ということです。今後の観劇予定は9月7日に御園座で玉三郎さんの舞踊公演、12日に南座で四谷怪談です。24日に歌舞伎座で秀山祭昼夜です。

投稿: カトウ | 2019年9月 3日 (火) 11時00分

カトウ様
8月も強行軍でしたね、お疲れ様でした。

雪之丞の星三郎への思いは勘三郎さんへの思いだと私も考えます。

政岡の嘆き、ちょっと力が入り過ぎていたような気もしましたが、千松のことを思うと嘆きも激しくなりますよね。とくに勘太郎クンが千松だったし。

弥次喜多、今回で終わりなのですか…。再来年、また復活してほしいけれど、何か他の企画があるのかもしれませんね。来年は上演時間なども含めて、どんな公演になるんでしょう、楽しみなような怖いような…。

盛夏に比べて涼しくなったとはいえ、まだまだ蒸し暑い日が続きます(私はこういう気候の方が苦手)。お体にお気をつけて、9月の歌舞伎鑑賞もお楽しみくださいね。

投稿: SwingingFujisan | 2019年9月 3日 (火) 20時07分

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