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2019年9月26日 (木)

九月歌舞伎座昼の部:「極付幡随長兵衛」「お祭り」「沼津」

9月13日 秀山祭九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
夜の部「勧進帳」のダブルキャストは、日程的に奇数日が無理だったので、昼の部終了後、事情と体力が許せば一幕見にチャレンジすることにした。で、無事仁左様の「勧進帳」を見ることができた。
まずは昼の部から。
「極付幡随長兵衛」
「公平法問諍」はこんなに長くやっていたんだっけとちょっと新鮮な気持ちで見た。頼義役の児太郎さんの品格と公平役の種之助さんの張りと勢いで楽しめた。種之助さんは最初誰だかわからなかった。小柄なのに大きく見えたし、顔が錦之助さんに似ているように思ったが声が違う、やがて又五郎さんの面影が見えてきて、ああ種之助さんだったのかと気が付いた次第。それでも隈取のせいか、やっぱり錦之助さんに似ている。
幸四郎さんは姿や動きが、時々吉右衛門さんと錯覚しそうなほど似ていた。まだまだ追いつくものではないだろうが、あの座組では大きさもあって、雀右衛門さんの女房とも違和感なく、また長兵衛の意気地と心をよく表現していたと思う。
松緑さんの水野はセリフがところどころ気になったのと、座敷で長兵衛と対面した瞬間から奸計が見えるようで、もうちょっと加減したほうがいいのではないかと思った。松緑さんの若さと暗さが水野の卑劣な行動を理解させるような気もしないではないが、一方では殺すには惜しい男というのが口先だけのように聞こえて、そういう肚は菊五郎さんなんかうまいなあと思う。そうしてみると、今回の若い水野はやはり悪役に徹していて、ベテランが演じる水野は水野にも意地があってやむを得ず長兵衛の命を奪わなくてはならなかったという違いが感じられる。でも、意地があるならあんな卑劣な手を使わなければいいのに…とか、やっぱり好きになれない演目だわ。
「お祭り」
明るく、無条件で楽しめた。長兵衛の後だけに気分転換ができた。
梅玉・魁春さんは兄弟で踊れてうれしいんじゃないかと思いながら見ていたら、こっちも嬉しくなった。梅玉さんはカッコいい。柔らかい感じなのにきりっとした粋がある。「待ってました」はいるかかるんだっけと待っていたらちゃんとかかって、「待っていたとはありがてえ」で客席から笑いが起きた。梅枝さんは扇をもっていない方の手の動きがとてもきれいだった。

「沼津」
歌六さん(平作)が赤貧の生活感をうまく出していて、それでも明るく心は真っ直ぐ、いやしくないのが胸を打つ。十兵衛(吉右衛門)は安兵衛(又五郎)のセリフでわかるが、宿はきれいな所をといつもうるさく言っているくらいだから、薄汚い雲助のような荷物担ぎが寄ってきても目もくれず、手で追い払うようにしている。汚いからというだけでなく、悪質な雲助だと思ったからということもあるだろう。しかしその話が耳に入ってくるうちにだんだん雇ってやろうかと気持ちが傾くところがこの人のやさしさを感じさせた。
前半のコミカルな場面からお米(雀右衛門)の盗みで一転シリアスな場面に。その前の床を用意するあたりも丁寧に描かれていた。お米の話を聞いて徐々に表情を変えていく十兵衛、心の動きが切々と伝わってくる。お米がやむにやまれぬ行動に走る思いを雀右衛門さんがきちんと伝えていて哀れであった。
三人の心の絡まりが丁寧に伝わってきて泣けた。娘の心情を誰より深く理解しながら盗みは決してやってはいけないと諭す平作に泣けた。自分より先に死んではいけないと娘に念を押す平作に泣けた。二人と自分との関係を知った十兵衛の姿にも泣けた。ラスト。「おやじさま!!」にどっと泣けた。
平作の家で口上があった。三世歌六の百回追善公演であるというだけの口上であるが、吉右衛門・歌六・又五郎・雀右衛門の播磨屋(プラス京屋)一門の結束が暖かく感じられ、ますます応援したくなる口上であった。
第一場の街道で、歌昇さんの長男小川綜真クンが歌昇・種之助夫婦とともに出てきて、そのまま花道に行っちゃったから、あれご挨拶なし?と思ったら、七三あたりで吉右衛門さんに呼び止められ、「お名前は?」に大きな声で名乗っていたのが可愛らしくて和んだ。その後はパパに抱っこされて引っこんだ。吉右衛門さんが又五郎さんに「お前に似ている」と言ったから客席に笑いが起きた。又五郎さんもどんなに嬉しかったことか。
2時間近い芝居だし、何度も見ているのにその濃密な舞台にどんどん引き込まれ、疲れることもなかった。だから一幕見する気になったのだ。
<上演時間>「幡随長兵衛」100分(11:00~12:40)、幕間35分、「お祭り」18分(13:15~13:33)、幕間20分、「沼津」109分(13:53~15:42)


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コメント

25日、赤坂で仕事があり、終わったら17:30。これは行けるか!?と歌舞伎座へ。千穐楽の勧進帳。それも奇数日ですから松嶋屋の弁慶。着いたのが18:10で開幕前でしたが、一幕見は満員売り切れでした。残念。3階席で空きはあるだろうと地下の売り場に移動したら、あそこは18:00で閉店なんですね。2幕目、3幕目から観たいお客の為にも、もう少し営業していても良いように思いますけどね。ついでに言えば、「時間割引き」もあっても良いでしょう。

さて「沼津」は泣けましたね。この座組で何回か観ておりまいたが、さらに深まった感があります。原作ですともう少し早い段階で親子・兄妹の関係を十兵衛は気づくようですが、歌舞伎の段取りも無理なく、心に染みます。

投稿: うかれ坊主 | 2019年9月27日 (金) 08時06分

うかれ坊主様
せっかく歌舞伎座に駈けつけられたのに残念でしたね。でも千穐楽の仁左様となれば、その時間ではやはり無理でしょう。13日昼の部終了直後でも立見でしたよ。
チケット売り場、たしかにもう少し営業していてもいいですよね。時間割引もあれば助かりますが、幕見があるので難しいかもしれませんね。私はリピート割引がほしいと思ったことがありました。松竹座だかどこかではあったような…。

「沼津」と言えばこの座組でしか考えられないくらい、密度の高いお芝居になっていました。何度も見ているのに心に響きます。

投稿: SwingingFujisan | 2019年9月27日 (金) 09時48分

やっぱりそうですよね。
もしかしたら最後になるかもしれませんしね。
そう思うと観たかったですね。
両方観ましたが、幸四郎は、滝流しまで入れる意欲と勢いのある弁慶。一方で松嶋屋さんの方は詰め寄りで和戦両様の構えが独特で2世段四郎からの澤瀉屋と同じ流儀でした。また角々をしっかりと芝居で見せる弁慶でした。

12月の国立劇場のアップされていて、「近江源氏先陣館―盛綱陣屋―」「蝙蝠の安さん」の2本立て。盛綱は松本白鸚で、蝙蝠の安さんは松本幸四郎です。

盛綱の方は国立ですので<小四郎凱旋>から叮嚀に上演するかもしれませんね。たっぷり2時間!

「蝙蝠の安さん」は木村綿花作品ですが、チャールズ・チャップリン原作の『街の灯』を基にしているようですよ。初見です。
生誕130年記念の公演。この作品だけ夜に一本公演する日もあるようです。

さてされ明日は、ナウシカの前売日ですね。
どうされます?わたしは12/14の通し狙いですけど・・・

投稿: うかれ坊主 | 2019年9月27日 (金) 11時44分

うかれ坊主様
両方ご覧になったのですね。でもやっぱり千穐楽を見たかったですね。

10月11月12月と都内3座で公演がありますが、私は10月歌舞伎座は昼夜ともパスです。予定が組めなかった。国立は見る予定です。11月は演舞場はもう入れたので3座見ることになりそうです。12月はどうしよう。ナウシカは見たいけれど、迷っています。国立はBプロにしたいところですが、上演日が少ないので結局はAプロにするかも。諸事情で、直前に予定が変わることが多々あり、日程を決めるのに苦労します。

投稿: SwingingFujisan | 2019年9月27日 (金) 16時33分

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