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2019年9月25日 (水)

名画に印象派を再び好きになる:「コートールド美術館展」

9月9日 「コートールド美術館展」内覧会(東京都美術館)
190925courtauld1 コートールド美術館という名前を初めて知った。どこの国にあるのかも知らずに出かけて行ったらイギリスの美術館であった。コートールドが地名ではなくサミュエル・コートールドという人名であることも初めて知った。レーヨンの製造・国際取引で莫大な利益を得た人で、印象派・ポスト印象派を、まだそれほど評価されていなかった1920年代、自分の目で作品を次々に購入し、コレクションを築き上げて行った(松方コレクションと時代が重なる)。その間10年足らず。個人コレクションとともに国立美術館への作品納入も行ったそうだ(どれだけの富を得ていたのだろう)。そして、ロンドン大学に美術研究所ができることが決まると、コレクションの多くを寄贈した。コートールド美術館はその付属機関として誕生したということだ。この美術館の作品がイギリス国外に出ることはほとんどないそうだが、今回改修工事による休館に伴い、日本にやってきたのだ。

最近、印象派にやや疑問をもつこともあった私だが、実は松方展とこの展覧会を見て、ああ印象派いいわ~(いい作品があるわ~)と思い直すようになった。
今回の展覧会は
1 画家の言葉から読み解く
2 時代背景から読み解く
3 素材・技法から読み解く
の3章で構成されている。
展示は絵画や彫刻作品のみならず、読み解きの一助として書簡やモード誌の図版などの資料がたくさん。そして主要な作品には見どころや技法が大型パネルで丁寧に解説されている。
さらに、モネ、ルノワール、マネについては名画の背景としてアルジャントゥイユの町の映像(モネ)、オペラ座(ルノワール)、フォリー・ベルジェールのバーの映像;シャブリエのスペイン狂騒曲を聴きながら(マネ)も小画面で流れていて興味深い。


1章はセザンヌが中心である。セザンヌといえばサント=ヴィクトワール山ばっかりという印象で、あまり好きではないのだが、今回のセザンヌはとてもいい。コートールドはセザンヌに情熱を注ぎ、イギリス最大のコレクションを築いたそうだ。私は風景画よりも「カード遊びをする人々」や「パイプをくわえた男」のような人物画の方が好きだ。「キューピッドの石膏像のある静物」には不思議な魅力がある。
2章には私の好きなピサロ、シスレー、シニャックが登場。他にブーダン、モネ、ルノワール、ドガ、ルソー、ロートレック、マネ。どの画家も有名だから、どこかで見たような気がする作品が多いが、あらためてこうして眺めると、風景画も大改造を経たパリの生活を描いた作品もいい。
ここでの目玉はマネ「フォリー=ベルジェールのバー」。中央にメイドが物憂げに立っており、その両側には大理石の台にのったお酒のボトルや花、果物などが並んでいる。しかし絵の大部分は人物群や静物が映った鏡の中の世界である。メイドも後姿が映っている。それなのにメイドの位置も姿勢も実像と鏡像にはズレが見られる。マネが意図的に行ったことらしいが、それが気にならないほど彼女の存在感は大きく魅力的である。
3章にも好きなスーラとボナールがいて、テンション上がった。彫刻はロダンだけでなく、ドガ(「右の足裏を見る踊り子」)、ゴーガン(「メットの肖像」)もあった。ロダンの作品には躍動感というか、動きを感じた。ドガの彫刻はやっぱり踊り子のドガだと思うが、モデルの女性はこのポーズを保つことに大変苦労したそうだ(たしかに)。
好きな画家はもちろんだが、普通に見ていた作品の良さを発見できたのが今回の展覧会であった。
190925courtauld2

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