« 「正倉院の世界」 | トップページ | 十一月歌舞伎座昼の部「研辰の討たれ」「関三奴」「髪結新三」 »

2019年11月21日 (木)

「オグリ」

11月12日 「スーパー歌舞伎Ⅱ オグリ」(新橋演舞場)
10月公演は希望の日にいい席が取れず断念。ダブルキャストでは、本当は2人とも見たかったのだがそうもいかず、猿之助さんの主役はスーパー歌舞伎で何回も見ているし、成長著しい隼人さんで見ることにした。
何カ月ぶりかの演舞場なので、銀座駅で日比谷線の乗車位置を間違えそうになった。

開演前の舞台には幕がなく、衣裳をつけた男女のマネキンが立っている。舞台奥は鏡になっていて、「十二夜」など、ニナガワの世界を思い出した(猿之助さんだから)。上手に設えられた宙乗り小屋で花道が見えない。でも私の列は他の席がすべて黒布で覆われていて、私1人だけという気楽な席。
思いついたままを流して書きます。小栗判官モノは澤瀉屋の「当世流」など見ているが、スーパー歌舞伎の「オグリ」はまったく初見であります。

新悟さんは決して美形ではないが、見ていくうちにこの照手には新悟さん以外ないと思った。見た目のしなやかさと、自分の生きる道を見い出し貫こうとする芯の強さが嫌味なく、美しく、自然に表現されている。凛としたたたずまい、透き通るような声。オグリの「真っ直ぐに自分の気持ちを伝えた姿はこの上なく美しかった」というようなセリフに強く同感だ。感動した。
一幕目の最後、船頭2人が照手を沈めることをやめて川に流す場面、2人の気持ちが伝わってきて素直にぐっときた。
隼人さんは小栗党を率いる頭らしい大きさ、線の太さがある。立ち回りもカッコいい。化粧した顔はおとうさんにそっくり。
暴れ馬の乗りこなしは、「当世流」では碁盤乗りだったが、スーパー歌舞伎では馬との立ち回りとも言えるほど激しい乗りこなしだった。暴れ馬鬼鹿毛も大活躍。普通の歌舞伎の馬と違って、脚も作りものであり、その分暴れ馬らしい動きになっていた。アイディアですなあ。スーパー歌舞伎おなじみの旗振りも暴れ馬の激しさを表現していた。
二幕目は閻魔大王・浅野和之さんの登場でニューカマーランドみたいなノリになるのかと思ったら、喜劇性を程よい匙加減で入れつつ、人間の罪について考えさせる。子に対する親の虐待は芝居でもつらい。六郎の玉太郎さんがその苦しみをよく伝えていた。
四天王ならぬ六人兄弟が閻魔に詰め寄ろうとするのをオグリが押さえる場面は勧進帳のパロディか。禅問答では閻魔が勧進帳ならぬ巻物を手にしてオグリに問う。最後の問いに対するオグリの答えがなかった(ように思うが)のはどう考えたらいいのだろうか。

花道でのハシゴは、宙乗り小屋が視界を塞いだが、ちょっと身体を右に倒したら見えた。モニター画面は小さいし解像度もあまりよくないのよね。
福之助さん(小栗四郎)の1人での立ち回りはなかなか迫力があった。上手と下手療法でツケが入り、盛り上がった。福之助さんもうまくなった。
本水を使っての立ち回り、隼人さんがかっこいい。水を蹴る形も一番きれいだった。
三幕目はたびたび泣かされた。浮きそうなセリフを真っ直ぐに言えるのは新悟さんだけだと思った。そのセリフに素直に泣かされた。また餓鬼病になったオグリの、自分は無力だという絶望感、熊野にたどり着いて無力だけどこれからは他人のためにという悟りにも泣けた。メリハリの付け方がうまくなったと思う。

オグリ兄弟の若手(竹松、男寅、福之助、玉太郎)がかなり頑張っていたと思う。このがんばりを、古典などでも見せてほしい。竹松さんはいつもあんな感じの役だなあ。確かに合っている。私の中では本来照手は笑也さんなのだが、今回はオグリ兄弟の三郎役。新悟さんはその透明感や女性らしさ、芯の強さなど、笑也さんを継ぐ照手なのだ。でも三郎は女として生まれ、女を捨てたという役どころで、これはやっぱり笑也さんだと思った。三幕目の山賊の1人は笑也さんだったのかぁ。猿弥さんはすぐにわかったけれど…。
男女蔵さんがなかなかだった。女郎屋の主人を下品にならずにコミカルな要素も交えて<らしく>演じていた。そういえばオメッティも亀治郎さんと浅草仲間だったんだよなと思い出した。
浅野さんはさすが、スーパー歌舞伎にも慣れていて、押さえどころを心得ている感じ。
石橋正次さんが出ているとはビックリ!! 昔レコード買ったんだよね~(「夜明けの停車場」)。いいおじいさんになっていたなあ(おじいさんは役の上だけど)。

宙乗りは隼人さんが上手側にいたから「やったぁ」と思ったら、猿之助さんと交叉して下手側に行ってしまった。猿之助さんを見たくないんじゃなくて、猿之助さんは何度も見ているから今回は隼人さんを見たかったのだ。まあ、それでも宙乗りがよく見える席だったから嬉しいは嬉しかったけど。猿之助さんが乗りかけた時、馬が舞台から落ちそうになったみたいで、いっとき騒然。私のところからは上手が見切れるのでよくわからなかったが、飛ぶタイミングで猿之助さんが隼人さんに「落馬しないように」とかアドリブで言って笑わせていた。猿之助さんはスッポンでの大事故があったから、ひやっとした。
スーパーリストバンドは主役の3人が宣伝しまくっていたが、嵌めている人はあまり多くなかったように見えた。一階席も前方はまあまあだが、あとはまばら(舞台の鏡に映る)。三階上手側は一人もいなかった。私は迷ったが、ワンピースのタンバリンと違い、他での使い道がなさそうだから結局記念品になるしかないなあと、やめてしまった。リストバンドなくてもちゃんとノれたし。

楽しかったな。やっぱり猿之助さんのオグリ、隼人さんの遊行上人(想像できない)も見たかったな。だいぶ雰囲気が違うんじゃないかしら。

<上演時間>第一幕60分(11:00~12:00)、幕間30分、第二幕50分(12:30~13:20)、幕間20分、第三幕95分(13:40~15:15)

|

« 「正倉院の世界」 | トップページ | 十一月歌舞伎座昼の部「研辰の討たれ」「関三奴」「髪結新三」 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「正倉院の世界」 | トップページ | 十一月歌舞伎座昼の部「研辰の討たれ」「関三奴」「髪結新三」 »