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2019年11月28日 (木)

「孤高勇士嬢景清」

1119日 「孤高勇士嬢景清」(国立劇場大劇場)
以前に「日向嶋景清」(松貫四=中村吉右衛門作)を見たことがあるが、あの時はあまり面白く感じられずほとんど寝てしまって、それでも何となく部分部分記憶に残っている。「日向嶋」は浜辺と海上のみであったが、今回は通しで、景清が自ら目を突き、鎌倉を離れるに至った経緯から始まる。
序幕「鎌倉大倉御所の場」では、最初頼朝が誰だかわからなかった。声を聞いて、ああ歌六さんだったのかと。歌六さんって二枚目なんだなあとあらためて思った。上に立つ者の大きさを認める前にそう思った。もちろん、大きさ、格も十分。
三幕目「手越宿花菱屋の場」の長さんはがらっと変わって女房の尻に敷かれる女郎屋さんの亭主。気の良い、優しい長さんの心がよく伝わってきた。女房の反対を押し切って糸滝にお金を与える、その心根と尻に敷かれていてもいざという時は強くなれる。頼もしい。ちょっとかっこいい。
長さんがこういう人だから、花菱屋のみんなも糸滝の心に寄り添えるのだろう。女郎さんたちの餞別が元結だのおしろいだの櫛油だの、女性の必需品であろう品であることがとても感動的だった‼。徳松・嶋之亟・京妙トリオ、遣手の橘三郎さんがさすがの味である。これを見てケチな女房(東蔵)も10年の年季を半分にすると約束する。周りの状況を見て、負けちゃいられないという、東蔵さんはそのあたりの硬軟メリハリがきいていて面白かった。
糸滝の雀右衛門さんはさすがに14歳には見えなかったが、愛おしい‼ ただただ父への思い、会いたい一途な気持ちが溢れ、ボロ泣きにこちらもぼろぼろ涙が出た。
又五郎さん(佐治太夫)が真摯に糸滝をいたわり、人柄がにじみ出ていた。


錦之助さん(秩父庄司重忠)は爽やか、ニンである。
歌昇さん(三保谷四郎国時)はべりべり感が見事。大きくなった。
米吉さん(玉衣姫)は可憐、亡くなった許婚に対する一途な強さを見せていたが、立場の複雑さがもう少しわかるとよかった。
吉右衛門さんは相撲をとったり(場所中なのでグッドタイミング)、立ち回りをしたり、元気。目を突き刺したのが、そこへいくまでの心情を理解しようとしている間に突然、それが起こった、と私には感じられ、戸惑いを覚えた。日向嶋の浜で娘を追い返す迫力の陰に潜む娘への思い(怯えた佐治太夫にせかされ、やむを得ず引き返す糸滝ちゃんが哀れで切なかった)、自分の境遇に対する思い、相反する心が痛ましかった。娘の顔を触って確かめる場面、よかったなあ、泣けた。真実を知っての慟哭、船を呼び戻さんとする声は、こちらの胸も張り裂けそうで泣けた。
日向灘海上、おお、船首に景清がいる。後ろには糸滝が控えている。景清は重盛の位牌と梅の枝を海中に沈める。重盛の冥福を祈りながら、きっぱりと人生を変えることにしたことにハッピーエンド感があってよかったと安堵する一方で、頼朝に帰順することなく孤高の誇りをもったまま島に残っていたら、俊寛みたいな感じになっていたのだろうか、なんて考えてしまった。

それにしても空席がひどく目立って、もったいなかった。

<上演時間>序幕30分(12:00~12:30)、幕間15分、二幕目30分(12:45~13:15)、幕間35分、三幕目35分(13:50~14:25)、幕間10分、四幕目65分(14:35~15:40)

 

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