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2019年12月30日 (月)

十二月歌舞伎座夜の部:「神霊矢口渡」「本朝白雪姫譚話」

12月26日 十二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
千穐楽。歌舞伎座も私も今年の芝居納めである。
「神霊矢口渡」
この6月に歌舞伎鑑賞教室で見てから半年か…。たいていどこかで寝落ちするこの芝居、今回はお舟と六蔵の絡みがちょっと怪しかった。梅枝・萬太郎兄弟の恋模様(お舟のほうは全くその気がないのだけど、一応恋模様としておく)はミーハー的観劇としてはしっかり見ておかなくちゃいけないところだったのに。
ただ、危なかったのがその場面だけだったので、物語には一応ちゃんと入り込めて人物の気持ちもよくわかった。
一目惚れの瞬間が面白い。扉を開けて義峯の顔を見た瞬間、びびっと電流が走ったか、ぴたっと扉を閉める。そして再び開け、義峯を中へ通す。義峯1人と思ったその時、連れの女性がいることに気づく、何とも言えないお舟の表情。うてなが妹なのか奥さんなのかやきもき1人で思い悩むお舟、癪を起こし白湯を求めに来た義峯に「あなた、ようおいでなされましたな」と2度も言う。そして「ここはととさんよりほかに気兼ねする人はいないから、10日も20日も10年も、いえ100年もお泊りなされてくださいませ」と、なんとまあ積極的なお舟ちゃん。一目惚れからクドキのあたりが客席の笑いを呼んだ。ところで、癪はどうなった、白湯はどうした?…
父頓兵衛に誤って刺されて争う時、「この世では添えないが親子一つではないという証拠があれば未来で添おうと言われた嬉しさ」というお舟の言葉が泣きそうなほど愛おしく感じられた。
梅枝さんのお舟はとても自然で、古風な雰囲気を漂わせながら歌舞伎の型の中でリアルな感覚を見せた。ただ、前半は娘役としての華やぎがもう少しあってもいいような気がした。後半は淋しげなたたずまいがとてもよく合っていた。お舟ちゃんとすし屋のお里ちゃんが重なって愛おしくなった。梅枝さんのあの古風さは歌舞伎役者としての財産だと思う。太鼓の場面、人形振りで見たかった(歌舞伎鑑賞教室では人形振りだった)。そう思ったら、梅枝さんのお七を見たくなってきた。
松緑さんの頓兵衛は、薮からぬっと姿を現した時が、衝撃的なほどぴったり役にはまっていた。老人なのに(と言ったら語弊があるだろうか)力強く、かっこいい。欲にからんだ悪いヤツではあるものの、180度見方を変えて頓兵衛の側に立ってみたら、その行動も理解できなくはない。そんな見方をしたのは初めてだ。頓兵衛を肯定するものではないが、彼の立場ならそれももっともかもと感じてしまったのは松緑さんの頓兵衛があまり悪人には見えなかったということだろうか。

「本朝白雪姫譚話」
あらためて玉さまの美しさに感銘を受ける。16歳はちょっと厳しいかもしれないけれど、児太郎さんが母親という関係に違和感は覚えなかった。児太郎さんもメリハリがあって、鏡の精の梅枝さんとの息がぴったり合っていた(この演出は面白かった)。3人の琴の連れ弾きは「おお阿古屋3人が」!!
七人の妖精の子供たち、歌がうまい。
輝陽の皇子の歌之助さんは最初に声を聞いた時、兄の橋之助さんに似ていると思った。セリフはこれからだろう。白雪姫は16歳だし、若手を育てようということがなければ、彦三郎さんが皇子のニンではないかなと思った。
気楽に楽しめる芝居ではあった。
<上演時間>「神霊矢口渡」67分(16:30~17:37)、幕間35分、「白雪姫」第一幕48分(18:12~19:00)、幕間15分、第二幕65分(19:15~20:20)

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コメント

今年もいろいろと情報いただきありがとうございました。
2020年がSwingingFujisanさんによってよい年でありますように。

「神霊矢口渡」では幕開きの船頭八助役の尾上松太郎さんがなんでもないようで良かったです。

3月の歌舞伎座が少し早く発表されましたね。
仁左衛門と吉右衛門の共演が嬉しいですね。
時代物の両雄が同じ舞台になかなか立って頂けないだけに大切で貴重な舞台になりそうです。
久しぶりの明治座と共に陽春が待ち遠しいところです。

私の初芝居は浅草からです。
来年もよろしくお願いします。

投稿: うかれ坊主 | 2019年12月31日 (火) 09時29分

うかれ坊主様
なかなか投稿できない1年間でしたが、それでもお読みくださって、この場でお話できて、楽しかったです。ありがとうございます。
三月の情報もありがとうございます。新薄雪物語、とても楽しみです。
たった今、年が明けました。
今年もまた、よろしくお願いいたします。

投稿: SwingingFujisan | 2020年1月 1日 (水) 00時01分

Fujisan様
あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。観劇ブログ記事楽しみにしておりますが、無理をなさらないで、お続けください。
私の歌舞伎始めは、歌舞伎座の昼の部でした。古希を過ぎた、吉右衛門の「素襖落」、いかがかと思いましたが、昼夜これ一役に賭けた充実感が素晴らしい。いろんな優で、何度も観た「素襖落」ですが、新歌舞伎十八番の舞踊劇とはこのように演じるものかと感じ入りました。セリフ回しは当然、素晴らしかったのですが、身体の動きの切れもなかなかでした。

投稿: レオン・パパ | 2020年1月 3日 (金) 18時20分

レオン・パパ様
あけましておめでとうございます。
ずっと自分の時間が取れず、せっかくいただいたコメントの公開が遅れて申し訳ありません。
今年もまた、お言葉に甘えて、遅れ遅れの投稿になりそうですが、どうぞよろしくお願いいたします。
私も歌舞伎始めは歌舞伎座昼の部です。吉右衛門さんの「素襖落」を楽しみにしていましたが、そんなに素晴らしいとはますます楽しみになりました。
「こいつぁ春から」を録画したので、先に見ておきたいところですが、本物を見てからにしようかしら。

投稿: SwingingFujisan | 2020年1月 4日 (土) 17時24分

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