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2020年1月16日 (木)

浅草歌舞伎第一部:「お年玉ご挨拶」「花の蘭平」「寺子屋」「茶壺」

1月14日新春浅草歌舞伎第一部(浅草公会堂)
早めに着いたので、あまり混雑しないうちにと急いで浅草寺にお詣り。やっぱり正月の浅草はいいねえとうきうきする。
「お年玉ご挨拶」
米吉さんだった。立て板に水、なかなかのお話だったので、記録しておきたい。
一通りの口上と名乗りのあと、突然マイクを取って「おはようございます」と普通の男子の声で言ったので客席から笑いが起きた。今日は芝居の中日で、とても大事な日。部屋着の浴衣やバスローブ、バスタオルなどを取り替えるのだそうだ。
浅草は2年ぶり、ご挨拶は毎回同じことをしゃべってもつまらない、今日は何の日かをしらべるのが一番よい。で、今日は大したことがなくて唯一「愛と希望と勇気の日」とあった(あとで調べたら他にも多少あるようだったが、この場で紹介するにはちょっと…だったかも)。南極でタロ・ジロが見つかった日なんだそうだ(「南極物語」、泣いたなあ)。それで「愛と希望と勇気の日」。
米吉さんのお母様が「タケルくんから連絡が来た」と言っていた。「今夜あけておいてください」というLINEメッセージが入っていたのだそうだ。へ~、歌六夫人って健クンと知り合いなのか、そういえば歌手だったものなあ、なんて思っていたら、それは佐藤健公式LINEで今夜9時からドラマがあるという、事務所から全員にくるものだったというオチ。
この後、演目の簡単な説明があった。「花の蘭平」は橋之助さんによると河内屋(延若)さん以来の上演だとか。幕が開くと桜の花盛り、新春浅草歌舞伎で「桜を見る会」を。これならだれにも咎められない(客席ウケて拍手)。
「寺子屋」はどうやって菅秀才を守れるか、今だったら箱に詰めて脱出させればよいが(もちろん、ここも大ウケ。時事ネタを2つもユーモラスに入れてきた米吉さんの力量に感心した)。
この後浅草寺に行く人もいるだろうが、「茶壺」を見たら、スリは危ないなと改めて注意してください、と浅草警察からのお願いです。
ほんと、米吉さん、話がうまい‼
「花の蘭平」
浅葱幕、鶯の鳴き声。
浅葱幕が振り落されると、蘭平(橋之助)と奴2人が板付きでいる。橋之助さんは全体に力強くセリフも声が太くてよかったが、物狂いがイマイチわからなかった。後半、拳を作った腕をふりまわすところが勢いがつきすぎて不安定な気がした。しかし、この踊り、20分と短くはあるが相当体力を使いそうだ。


「寺子屋」
隼人さんの源蔵は大先輩たちより若いせいなのか、力というか緊張感がマックスに感じられた(大先輩たちにももちろん緊張感はあるが、漂う空気は少し違うような感じ)。たとえば戸浪に覚悟を語る場面は血を吐くような苦しみとともに迫力があり、松王との対峙でもすぐにでもとびかかりそうな切迫感があった。小太郎を身替りにするという源蔵に、自らも覚悟を決めた戸浪(米吉)、泣く源蔵と戸浪、そして源蔵は戸浪を抱く。鬼にならざるをえない2人の任務の苛酷さが伝わる。米吉さんがともに鬼となり地獄へ落ちようという夫への理解をよく表現していた。
玄蕃(歌昇)が現れるまでの間、源蔵は奥へ引っ込み、ここで浄瑠璃が交代する。床が回らないため、太夫と三味線が床を降り、交代の2人が上がるのだが、それが目に入るとちょっと気になった。
机が1つ多いのを松王丸に見とがめられた戸浪が「今日、入った子の…」と言いかけ松王丸が苛立ってそれを遮り、戸浪はやっと気づいて「菅秀才の」と文箱を松王丸に見せる場面だが、今まで流して見ていたこの場面、あれ戸浪はこの松王の苛立ちをおかしいとは思わないのか、ここで何かに気づいたんじゃないか、と疑問をもってしまった。
源蔵が小太郎の首を打つ掛け声を聞いた時よろめく松王丸、首桶の前でがっくり頭を垂れる松王丸、玄蕃に気づかれないかしら。これも今まで流して見ていたが、ふと気になってしまった。病気ということになっているから、ごまかせるか。よろめいた時には千代とぶつかって「無礼者」と一喝したことでこれもごまかせるか。
玄蕃はベテランがやると寺子たちを微笑ましく眺めることがあるが、歌昇さんはあくまで厳しく憎らしかった。うまい。
玄蕃が帰った後、戸浪は無事な菅秀才の姿を上手側の部屋から出して夫に見せる(押入れに隠す型もあるが、今回は別の部屋に隠した)。源蔵はほっとして平伏し、自分で水を飲みに行く。戸浪に水を所望する型の方が自然な気もするが、自らというのもありだなと思った。
小太郎を連れ帰りに来たと、その名を奥に向かって呼ぶ千代(新悟)が悲しい。源蔵宅の戸口で声をかけ、開くのを待っている間、周囲を気にして何か口を動かすようにしているように見えたのはなんだっただろう。文箱で源蔵の太刀を防ぎ、「菅秀才のお身替り、お役に立てたか、それともまだか」との悲痛な叫びに涙を禁じ得なかった。文箱の蓋をあけ、経帷子と六字の幡を見せ、泣く。そこへ松王丸が現れる。千代の悲しみ、切なすぎて泣けて泣けて…。別れ際にいつになくあとを追ったのを叱ったというのが一番つらい。新悟さんの千代、本当によかった。今思い出しても涙が出る。そっちへの思い入れが強すぎたせいか、「桜丸が不憫でござる」にはいつも泣かされるのに今回は泣けなかった。
松也さんは源蔵夫婦とのやりとりもよかったし、新悟さんともいい夫婦で、松王丸なりの苦しみが伝わってきた。源蔵夫婦ともども、それぞれの生活が見えるような感じがした。私は硬軟というイメージだけで、松也さんは源蔵、隼人さんが松王丸(ちょっと早いとしても)かなという気がしないでもなかったが、この配役でよかったと思う。
首のない遺体はいつも哀れで泣ける。
「茶壺」
「太刀盗人」と同じような狂言。
歌昇さん(麻胡六)が田舎者の朴訥さを楷書的コミカルに、巳之助さん(熊鷹太郎)が都会の盗人の小狡さを存分に表して面白かった。連れ舞は、麻胡六を真似て少しずらしてしかもやや下手に踊る巳之助さんは難しかっただろうし、歌昇さんの方も巳之助さんを気にしながらで大変だっただろうが、2人の息がぴったり合って達者にその微妙なところを見せた。
目代の錦之助さんは楷書の演技だったと思うが、その味で舞台を締めるとともに、さらに盛り上げていた。大して役に立ちそうもない裁き役の立場と大らかな間抜けぶり(言葉は悪いが、決して有能ではない)は若手ではうまく出せないかもしれない。熊鷹太郎があんまり調子いいので、早く気づいてあげてよ、とやきもきさせられた。目代ではなく麻胡六の智恵でついに熊鷹は追い詰められ、「○△×□☆*」。目代も「○△×□☆*」。大人の滑稽さが面白くて錦之助さんの芸の幅広さを感じた。
<上演時間>「お年玉ご挨拶」10分(11:00~11:10)、「花の蘭平」20分(11:10~11:30)、幕間20分、「寺子屋」80分(11:50~13:10)、幕間25分、「茶壺」35分(13:35~14:10)

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コメント

17日に新橋演舞場で昼の部を観ました。寝坊してしまい東京駅着が11時50分タクシーで行きました。金閣寺の雪姫が縛られて桜の花弁で鼠を描く場面からでした。右團次さん羽柴筑前を気持ちよく演じられていますね。獅童さんの松永大膳も大きいです。鈴ヶ森は海老蔵の長兵衛、莟玉の権八。莟玉さんはおっとりした感じが良いです。新作の雪蛍恋乃たきは忍者の物語です。勧玄君が忍者稲妻の幼少期を演じ立回りも良かったです。戦国時代の争いを舞台にしていました。19時からはオーチャードホールで花總まり・愛に生きた女王を綴るでVa古澤厳、pf塩谷哲指揮角田鋼亮、東京フィルで額田王はじめトゥーランドット等を取り上げ語りと歌と演奏でした。18日国立劇場は菊五郎劇団で菊一座令和仇討。ここも白井権八、笹野権三が鈴ヶ森で出てきますが話は違います。鎌倉時代、江戸時代色々と南北らしく、ない交ぜにしています。坂東亀蔵さん声が楽善さんに似ていると思いました。浅草は劇評で米吉さんを誉めていたので行きたかったのですが内容を書いていただきありがとうございます。2月は9日に文楽の菅原を見てから歌舞伎座夜の部10日昼の部です。チケットは電話が繋がったのが12時過ぎでしたが3階6列が取れました。1月は東京四座大阪一座でしたので皆様も観疲れでしょうか。

投稿: カトウ | 2020年1月19日 (日) 13時26分

浅草歌舞伎は、実は観る前は少し心配していましたが、それぞれが持ち味を出して良かったと思います。
『せまじきものは宮仕え』のあとで源蔵と戸浪が抱き合うところや菅秀才の隠し場所などなど松嶋屋さんの指導なんでしょうね。
『助けて帰る』ははっきり奥の源蔵に聞かせるように上手向きに言い、玄蕃と顔を合わせたので、思わず咳き込むという段取で確かに底割れとなりかねないところがいくつかありましたよね。
(蛇足ですが菅秀才という役名はいつ見ても上手いものだと思いますね。)
私は迂闊に知らなかったのですが、光秀の笠の取り方では直近の吉右衛門の時は途中まで下に降ろし、後半は上に上げたそうです。歌昇はどうするのでしょうか。

さて、今日はこまつ座の『イヌの仇討』でした。最近はご覧になっていらっしゃらないのでどうかと思いましたが勝手にレポします。これも何回となく観てきた作品ですが、最後のところでグッと込み上げるものがあり、感動も新たにと言うところです。
今年のこまつ座は『雪やこんこん』までは知っていたのですが、7月に『人間合格』10月に『私はだれでしょう』までのチラシができていました。
さらに劇団民藝と初提携で12月に三越劇場で『ある八重子物語』を上演するそうです。

投稿: うかれ坊主 | 2020年1月19日 (日) 17時56分

カトウ様
演舞場、遅れて焦られたでしょう。桜の花びらの場面からでもご覧になれてよかった、一番の見どころでしょうし。
莟玉さんの権八は見たかった‼ 
勸玄クン、成長しましたね。時々テレビの情報番組で見るだけですけれど、精神的にも成長したなあとしみじみ思います。新作もできれば見たかったです。

米吉さんは第二部のおかるもとてもよかったですよ。感動しました。

私の観劇はあと、歌舞伎座夜の部、国立劇場です。1月ももう20日…日々、時の流れが遅いように思っていましたが、もう20日と考えると早いです。

投稿: SwingingFujisan | 2020年1月20日 (月) 22時30分

うかれ坊主様
浅草、よかったですよね。第二部も見ましたが、どちらの演目も感動しました。
光秀の笠、全然注意していませんでした。そういうところを見逃すというか意識していないとダメなんですね。

こまつ座、なかなか申し込めないのでお断りしたのに今でも案内が来るのが心苦しいです。「イヌの仇討」も「人間合格」も見ていないので見たいのですが…。「私はだれでしょう」は初演(? 浅野ゆう子さんが出ていました)を見ましたが、イマイチな気がしたのでリベンジしたいと思いつつ今はもう無理かな。
こまつ座のラインナップ、いいですね~。魅力的です。

投稿: SwingingFujisan | 2020年1月20日 (月) 22時43分

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