歌舞伎ミーハー観劇記

2017年11月30日 (木)

「ワンピース」

1120日 「ワンピース 麦わらの挑戦」(新橋演舞場)
10月に通常公演(夜の部)を取っていたのだが、体調不良のピークで断念。猿之助さんが大けがをしたからこそ、応援したいと思っていたのだが…。それにしても通常公演と麦わらの配役が同じになったのが複雑な気分だった。演舞場初演時とは場面や配役がいくつか違ったが(大きな違いも)、初演時の感想と重なる部分もあるので、今回は簡単に。
ルフィの尾上右近クンは動きが初演時の猿之助さんそっくり。感情表現が豊かで、行儀良く、かつはつらつ、生き生きとしており、ルフィ役が楽しくてしょうがないという感じ。若い分、よりルフィに近いのだろうが、今思えば2年前の猿之助さんのルフィも少年らしさが十二分に感じられて、あらためて猿之助さんの才能を思ったのだった。
楽しくてしょうがないのは他の若手も同じで、とくに新悟クンのサディちゃんは、普段辛抱の役が多い女方としても楽しかっただろう。ん?サディちゃんなんていたっけ? エースの拷問場面なんてあったっけ? と思ったら、この場面は演舞場初演時にはなかったみたい。ニューカマーランドや巳之助クン大熱演のボン・クレーは初演時の衝撃が凄すぎて今回はさほどでもなかったが、かわりにこのサディちゃんのインパクトが強烈であった。

シャンクスとエースが福士誠治クンから平岳大さんにかわったが、平さんもとても素敵だった。命を捨ててルフィを守ったエースがシャンクスとなって現れることで、もちろんエースは帰ってこないとわかっているのに、ほっとした気分になれた。
トニー・トニー・チョッパーの市川右近クンが可愛いだけでなく、役の心をよくつかんでいるのが素晴らしかった。猿クンバージョンも見たかった。
右團次さん(右近3人勢揃い)の白ひげは碇知盛の衣裳で、最も歌舞伎的。それでもまったく違和感がないのは、「ワンピース」という芝居そのものが、まさに歌舞伎であるからだろう。
また何年かしたら、見たくなるだろうなという余韻を残した芝居であった。

ところで、買うつもりのなかったタンバリン、買ってしまいました。
<上演時間>
第一幕50分(11001150)、幕間30分、第二幕60分(12201320)、幕間25分、第三幕85分(13451510

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2017年11月27日 (月)

坂崎出羽と沓掛時次郎

1118日 「坂崎出羽守」「沓掛時次郎」(国立劇場大劇場)
いつも通り半蔵門のサンクスでお茶を買おうと思ったら、なんとサンクスがなくなっていた。サークルK・サンクス全店がいずれファミマに変わることは知っていたが、ここは今だったか。
劇場では先月と違って空席が目立つという情報をいただいていたので心配したが、この日は団体が入っていたせいか、少なくとも3階はけっこう入っていた。
「坂崎出羽守」

第一幕:茶臼山家康本陣
緊迫の幕開きのせいか、開幕時の拍手はなし。松緑さんの登場でやっと少し拍手が起きた。千姫を心配する家康(梅玉)に、淀君が千姫を離さないと南部左門(松江)が報告する場面、先月歌舞伎座の玉三郎さんの淀君を思い出した。先月は落城する大坂城を内部から、今月は攻める側から見ているのだと、心の中で2つの作品がつながった。
梅玉さんは珍しい老け役だが、存在感はさすがに大きい。
権十郎さん(本多正純)の顔が新・彦三郎さんと似ている、と初めて(じゃないかもしれない)思った。
第二幕:宮の渡し船中
すでに千姫は救出されており、坂崎出羽守が駿府へ送り届ける船上。出羽は顔に火傷を負っている。一方の本多平八郎忠刻(坂東亀蔵)は爽やかな二枚目だ。出羽には火傷の負い目もあったかもしれないが、それ以上に性格的な問題というのか、心の闇がありそう。本多平八郎との比較でもそれが浮かび上がる。出羽にはセリフのない時間も多く、松緑さんが心理だけで見せる。松緑さんは私が歌舞伎を見始めた頃は竹を割ったようなという表現がぴったりの、いかにも江戸っ子な役が合う役者さんだったが、いつの頃からか陰影のある役にもニンを示すようになったと思う。
松川源六郎の歌昇さんは先月に続き忠実な家来役。こういう真っ直ぐな役が歌昇さんには似合う。源六郎が後に出羽の不興を買うのはまっすぐ過ぎた故だが、その哀れさもうまく表現していたと思う。
三宅惣兵衛は最初だれかと思った。いただいたコメントを思い出し、ああ橘太郎さんか、と。橘太郎さんは、本当に役になりきるのがうまい。
梅玉さんの老け役が珍しければ、梅丸クンの太鼓持ち的茶坊主も珍しい。菊市郎さんとのコンビでちょっとしたアクセントになっていた(梅丸クン、可愛い!)。

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2017年11月21日 (火)

顔見世歌舞伎夜の部

1112日 吉例顔見世大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
日付を打って、あらもう1週間以上も経ってしまったわ、と我ながら…。
「仮名手本忠臣蔵五段目・六段目」

仁左様の勘平に触れる前に、特筆しておきたいのは彦三郎さんの千崎弥五郎である。終始勘平への友情に満ちていて、再会の喜び、50両を返す無念さ、裏切られたことへの怒りと悲しみ、勘平の無実が明らかになった時の安堵と喜び、その直前に起きた衝撃の切腹、すべてが勘平への思いを表していた。勘平の絶命後、外へ出て泣く姿は、千崎の気持ちに観客を同化させる、と言おうか、あるいは見る側の気持ちを千崎が代弁していると言おうか、私はそういう千崎がとても好きである。権十郎さんがよく演じていた千崎、おお叔父から甥へ、という感慨もあるが、こんな千崎は初めて見たような気がする。
彌十郎さんの不破数右衛門は年上でもあり、勘平に対して千崎ほどの個人的な友情はないせいか(多分、ない?)、冷静に見ている感じがした。一方で彌十郎さんという役者の人柄が大きな暖かさを示していたと思う。
仁左様、舞台中央に座っている幕開き、笠を取った時の猟師としての生活感を感じさせながらも一抹の寂しさを含む姿が美しい。千崎と出会った懐かしさにはこちらも胸が躍った。武士である勘平の、落ちてからず~っとの気持ちが伝わってくる。そして人を撃ってしまった驚きとおののき、それなのに50両を奪う…それってどうなの?と疑問が湧いた(何回も見ている場面だけど、そんな疑問、これまでに持ったことあったかな)。
自分が撃って金を奪ったのは舅らしいと気がついてからがず~っと辛さに耐えていたから、潔白がわかった時の嬉しい表情がリアルに胸に沁みた。売られていくおかるを呼び止め、抱き寄せて「まめで」と別れを告げる場面、二人侍に申し開きを懇願する場面には泣けた。「色にふけったばっかりに」は、「色に」で一度言葉を止め、再び「色に」と始めるのが、勘平のどうしようもない悔いを強調しているように感じられた。
この物語は勘平の物語でもあるが、いっぽうでおかやの物語であるともいつも思っている。しかし、今回はおかやの物語がやや薄かったような気がする。なん全体にちょっと違う…吉弥さんは案外ニンじゃないのかも。
孝太郎さんのおかるはよかった。秀太郎さんのお才の巧みさ、松之助さんの源六の軽妙さもよかった。
染五郎さんの斧定九郎、線が太くてなかなかよかった。ただ、五段目は全体に<雨>があまり感じられなかった。

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2017年11月 7日 (火)

顔見世歌舞伎昼の部

116日 吉例顔見世大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
自分では別の日にいつもの3階席を取っていたのだが、たまたま2階席のチケットをくださる方がいて、ありがたく観劇してきた。演目・配役が発表になった時には演目の方に注意がいって、重いなあという感想だったのだが、よくよく考えれば(考えなくても)今月はいかにも顔見世らしい大看板揃い。藤十郎、菊五郎、吉右衛門、仁左衛門、東蔵と人間国宝が5人も揃っているんじゃない、と今さらながらすごいと思った。相変わらず眠い日々で、各演目少しずつ(少しずつ、ね)寝落ちしてしまったが…。それに、同行者とオペラグラスを分け合ったので、よく見えなかった部分もあり、感想はとりあえず簡単に。
「鯉つかみ」
そういう中で、染五郎さん、児太郎クン、廣太郎クンと若手中心の演目だった。それに、染五郎さん、最後の舞台になるんだとあらためて気がついた。
演目自体は過去に2回見ているのだけど、今回は明治座の大詰から始まるため、物語としてはちょっとわかりにくいかも。とくに、本物の志賀之助が登場してからの進行がいまひとつはっきりしないように思えた。その辺はある意味歌舞伎らしいとも言えるかもしれないけれど、見ている側としてはもどかしい。再見の際に、確認したい。
開演時刻になると場内真っ暗になり、幻想的な蛍夜の舞踊が始まるが、この場面はすっかり忘れていた。舞踊劇かと思うほど、所作の時間が長かった印象だが(途中で眠くなった)、後半、染五郎さんの早替り、舞台上での宙乗り、本水を使った鯉との立ち回りと、これが朝一番の演目か、とちょっとびっくり。早替りでは、吹替えの役者さんの顔がはっきり見えたが、どなたかはわからなかった。鯉には足があったけど、明治座でもそうだったかしら…。

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2017年10月31日 (火)

「霊験亀山鉾」千穐楽

1027日 「霊験亀山鉾」千穐楽(国立劇場大劇場)
初見の際、入りの良さにびっくりしたが、千穐楽のこの日もほぼ満席で嬉しかった。いつもこれだけ入るといいのに。
再見なので感想は思い出すままに。
・錦之助さんの源之丞は優しくて何となく頼りなさげなところが、いかにも女性にモテそうだなあ。落とし穴にはまって最期とは…。
・孝太郎さんのお松は可愛い。初見の時はそうでもなかったが、今回はとても可愛らしい奥さんだと思った。お松が可愛いだけに、おつまのほうには思い入れがあまりできなかった。でも、おつまだって源之丞のために体を張っていたんだよなあと思うと哀れになる。雀右衛門さんの細やかな一途さがおつまの気持ちを見る者に伝えていた。
・初見の時に寝落ちして見逃した鏡の場面、実は前回も見ていた。ただ、前回は二階から水右衛門が顔を出したところ(仁左様の早替り)だけに目がいっていたので、それが鏡の場面だと認識していなかったのだ。
・仁左様の冷酷非道な悪(おつまのお腹の子まで…)は恐ろしいが、あんまり素敵なので嫌悪感はない。しかし、こんなひどい人間がどのようにして出来上がって来たのか。ということを芝居を見るとよく考えるが、この水右衛門に限ってはそんなこと考えるのは野暮かもしれない。悪いから悪い、悪は悪、それでいいような気がする。八郎兵衛のほうは愛嬌に裏打ちされた小悪党ぶりがよい。おつまへの思いなんて案外かわいいところがあるなと思った。
・おりき(吉弥)の場面で好きなのは、狼騒ぎで棺が間違えられたと知ってからの慌て方と、棺の中の水右衛門に語りかけるところ。なぜだか自分でもわからないが、おりきの別の一面を見るようだからだろうか。
・狼騒ぎは、ども又の虎騒ぎを思い出したが、こちらは本物の狼で、舞台を走り抜けていった。
・眠いは眠かったけれど、やっぱり面白かった。子役ちゃんが可愛かったことも忘れずに記録しておこう。

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2017年10月29日 (日)

十月歌舞伎座夜の部

1022日 十月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
相変わらず眠い。夜の部はリピートしないのに睡魔と闘いながらの観劇で、やっとの感想です。
「沓手鳥孤城落月」
新劇と歌舞伎の融合みたいな…。玉三郎さんが新劇的で、「美」ということにとてもこだわっているように見えた。もちろん、玉三郎さんはいつもそうなのだが、こうした狂気とも言える状態に陥った人間を演じることでとくに「美」を意識していたように思う。それはそのまま七之助さんの美へとつながっているように感じられた。
玉三郎さんは最初の出から圧倒的だった。この演目は先代芝翫さんで2度見ているが、芝翫さんは徐々に狂気に捉われていく感じだったのに対し、玉三郎さんのは自ら狂気を作り出していくような…(違うかな?)。どちらがいいとかいうのではなく、違いが興味深かった。
今回は裸武者は出ず、そのかわりに徳川方の密命を帯びて婢女に身をやつした常盤木が千姫を連れ出そうとする。前回上演(平成239月)の際の裸武者は児太郎クン、そして今回の常盤木も児太郎クン。当時はまだ幼さを残す細い身体で勇ましく立ち回っていた児太郎クンが、今回は強い覚悟をもった女性として任務に当たり自害する。ちょっとテンションが高すぎるような気もしたけれど、潔さがよかった。
七之助さん(秀頼)、松也さん(大野治長)、坂東亀蔵さん(大住与左衛門)、梅枝さん(饗庭の局)、米吉クン(千姫)、彦三郎さん(氏家内膳)と登場人物が前回公演からぐんと若返ったが、みんな、とくに彦三郎さんがよかった。
「漢人韓文手管始」
コメディタッチの前半に油断していたら、後半はまったく違う展開になってびっくりした。七之助さん(高尾)の愛が屈託なく可愛いだけに、女の怖さを思った。鴈治郎さん(伝七)は知らぬ間に典蔵(芝翫)の心変わりに翻弄されとまどいつつも主君を守ろうとする心意気が感じられた。芝翫さんは、あんなに堂々として大きな人物に見えるのに嫉妬と遺恨で相楽家を窮地に陥れる心の変化と意地悪ぶりがよかった。松也さん(奴 光平)はカッコよかった。昼夜の3役、どれも骨太で、松也さんにはこういう役のほうが合うような気がした。出色は高麗蔵さんの相楽和泉之助。典型的なつっころばしで、自分じゃ何もできない主君のだらしなさ、品格が見事に表現されていた。
和泉之助、伝七、光平は「伊勢音頭」を思い出させた。

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2017年10月28日 (土)

マハーバーラタ戦記再見

1019日 十月大歌舞伎昼の部再見(歌舞伎座)
「マハーバーラタ戦記」
とにかく眠くて。今月は家庭の事情で超多忙(感想も今ごろになってしまった)、この後もずっと超睡眠不足で眠い日々。
そんな中でも面白ければ何とか頑張れる。今回は何度も寝落ちしたけれど、自分としてはかなり頑張ったほうだと思う。
全体の感想としては初日と同じ。
今回気がついたことは、
・鶴妖朶王女(七之助)とその弟道不奢早無王子(片岡亀蔵)の心の闇。100人もの兄弟がいながら1人ぼっちだったという鶴妖朶王女の寂しさがああいう人物像を作ったのだと思うと哀れな気がした。迦楼奈とは似ている、と言い、そういう人と出会えたことの喜びにも哀れを覚えた。亀蔵さんは初見時も気になる存在だった(亀蔵さんもこういう立ち位置の役がとてもうまい)が、姉に従うだけの存在だと自分を評していたのが心にしみた。
・二幕目で弗機美姫(児太郎)が乗って登場する象。この日は前脚も後ろ脚もなんとなく危なっかしい感じで、先導する侍が前足に手を貸していた。後ろ脚はすごく踏ん張って耐えていた。初見時は、おお象で登場か、とただ目を奪われていたのだが、脚役の役者さんがどんなに大変かを垣間見た思いがした。
・動物と言えば、大詰の迦楼奈(菊之助)と阿龍樹雷(松也)戦闘シーンで、ベン・ハー並みの戦車が使われるが、これを引く馬の脚も素晴らしい働きだった。戦車での戦いは初日より長かったような気がする。まずは<馬らしさ>が見事だったし、舞台を何周も走り回る馬さんたちの活躍・運動量は特筆されていいと思う。象とともに国立劇場賞の特別賞に匹敵するんじゃないかしら。
・きれいな2人(菊之助×松也)の直接対決はビジュアル的にも大満足。阿龍樹雷は戦いが始まる前に戦闘意欲を失っていたが、久理修那に諭されて戦いに赴く。兄と知ったから迦楼奈を殺せない気持ちはわかるし泣けたけど、兄じゃなかったら…と思う気持ちもある。
再演熱望。


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2017年10月20日 (金)

大きな悪の華:「霊験亀山鉾」

1015日 「霊験亀山鉾」(国立劇場大劇場)
日曜日だからなのか、仁左様人気なのか、演目人気なのか、久々に活気のある国立劇場に身を置いた。芝居の途中途中も盛り上がり、楽しかった。観劇日から間があいてしまったので、感想へのネツが冷めかかっているかも。

序幕第一場でいきなり敵討ちがあるというので、敵討ちを巡る話らしいことしか知らないで行った私はびっくり。
仁左様水右衛門の大きな大きな悪はカッコよくて、どこまでも悪いヤツなのだけど、とても魅力的だった。ドスのきいた迫力ある声と、ぞっとするような冷たい美しさ、まさに悪の華である。一方、隠亡の八郎兵衛は仁左様のような大きな役者にとってどうかなと思ったけれど、演じ分けに違和感はなかった。2人が登場するたびに大きな拍手が起こり、場内の興奮が伝わってくるのが嬉しかった。
焼場では、取り違えられた棺桶の中に水右衛門が入っている。火をつけられた時にはさすがの水右衛門も熱くて慌てているんじゃないかと心配(?)したが、棺桶が割れて姿を現した水右衛門は悠然たるもの。おつまと腹の子の命まで奪い、石井家の命をいくつ奪ったかと指折り数える冷酷さ。でもカッコいいんだよな。この場では「おお、本雨‼」の興奮もあった。
錦之助さんの源之丞はぴったりのニンで、灯りを借りに来た飛脚に敵討ちの噂話を聞いて矢継ぎ早に問いかけるものの詳しいことは何も知らない飛脚に対するもどかしさ、下げ(号外のようなものか)で詳細を知っての無念の思いがよく伝わってきた。源之丞には2人の妻がいて、その名がお松とおつま。
お松の孝太郎さんも、機織りで暮らしを立てている生活感が出ていてぴったりだった。
おつま(雀右衛門)の登場する場面はなんだか展開が早くて忙しい気がした。ここのところの睡眠不足で、鏡で水右衛門の姿を認める場面を寝落ちしてしまったのが何とも悔やまれる。もう一度見る予定なので、次は寝ないように頑張るぞ。
又五郎さんが実直さを見せて好感度大である。無念の返り討ち(しかも毒殺)にあった石井兵介だが、もう一役の袖介がついに敵を討ち、気持ちがすっとした。こういう二役というのもこの芝居には合っていると思った。
貞林尼の秀太郎さん、大岸頼母の歌六さん、出番は短い(とくに歌六さんの捌き役)が、きちっと舞台がしまるのがさすがだ。貞林尼が孫のために自ら命を絶つ場面では思わず泣けてしまった。
南北モノにしてはどろどろ感が薄くはあるが、私はあっさり気味が好きなので、十分面白かった。いや、これだけ冷酷なら十分でしょ、という感じでもある。
仁左様、捌き役の細川勝元が断然ステキだが、仁木弾正も見たくなってきた。
<上演時間>序幕40分(12301310)、幕間35分、二幕目100分(13451525)、幕間15分、三幕目・大詰50分(15401630

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2017年10月 2日 (月)

十月歌舞伎座昼の部:マハーバーラタ戦記

101日 芸術祭十月大歌舞伎初日昼の部(歌舞伎座)
久々の初日はやっぱり華やかな雰囲気がいいなあと浮き立つ気分。音羽屋の奥様2人と寺島しのぶさん、3階では山川静夫さん。ミーハーは有名人に弱い…。
「マハーバーラタ戦記」
上演時間が発表になったのは前夜だっただろうか。終演1550って!! しかも序幕は1時間50!! 正直、さすがに序幕の終わりの方は集中力が途切れた。で、二幕目で汲手姫の5人の王子のうち4人が死んだと聞いて、え、そんな場面あったっけととまどったが、そうだ、火事だと思い出した。

全体として、まずは面白かった。インド歌舞伎と言いながら、無国籍歌舞伎のような気がした。インド色を強く感じたのは登場人物の名前や神々の衣裳(光背付きできんきらきんに輝く豪華な衣裳)、身分・職業制度くらいで、それ以外の衣裳は基本的に歌舞伎の衣裳、物語の舞台も日本と言えば日本、そうでないと言われればそうでない…。そして、恐らく何よりも扱っている問題がグローバル、とくに現在の東アジア情勢に重なり(力による支配か、慈愛による支配か。先に攻められるのを待っている、なんてまさに)身につまされるからであろう。
幕開きは大序みたいだった。竹本に合わせ、神々が1人ずつ顔を上げて決まる。そして神が作り上げた世界で人間どもが戦いを始めそうだとの危惧が口々に語られる。現代語とまではいかないがセリフがとてもわかりやすく、つかみはOK、ここは面白いと思った。
音楽は、竹本、長唄にパーカッション(鉄琴、木琴、太鼓等)で、パーカッションがとくに不安な状況を盛り上げた。両花道が多用されたのも効果的だった。
汲手姫(梅枝→時蔵。懐胎時は梅枝)の懐胎はマリアの処女懐胎を思わせ、生まれてきた子が世界を救うというのもキリスト教に類似しているが、世界各国の神話で同様な言い伝えがあるのだろう。汲手姫が赤ん坊が河に流す場面ではモーセを思い出した。ただ、汲手姫の場合は、未婚の女性が子供を産むことが許されないというインドにおけるやむを得ない事情があったのだということがいまひとつ伝わりにくかった。しかし、実は兄弟である迦楼奈(かるな:菊之助)と阿龍樹雷(あるじゅら:松也)王子の決戦において、倒され「とどめを」と促す迦楼奈に阿龍樹雷が「できませぬ。兄上」と絞り出すように叫んだ時は思わず泣けた。迦楼奈との対比で阿龍樹雷が憎々しげに見えることもあったが、彼もまた自分の信念に基づいて動いていたのだな、とこの時納得したのだった。
カーストについてもその厳しさを知識として知ってはいるが、それがもたらす様々な障害を呑みこむのにちょっと時間がかかった。
戦闘シーンは激しく、ベン・ハー的戦車まで出てきた。馬、象と人が乗る動物が何回か登場したが、中に入っている役者さん大活躍であった

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2017年9月24日 (日)

九月歌舞伎座昼の部

922日 秀山祭九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
今月中旬以降はなかなか予定は立たず、とりあえず昼の部は確保しておいたものの、やっぱり断念か→湯殿の長兵衛だけは見たい→見られるかも→見る→「道行」も見られそう。
ということで事情の推移があり、「毛谷村」は残念ながらパスせざるを得なかったが、何とか2番目の演目から見ることができたのはラッキー。できれば、昼の部の後、そのまま「逆櫓」を幕見したかったが…。
「道行旅路の嫁入」
松並木を背景にした置きの浄瑠璃が終わると、背景が真ん中から開き、富士山が。そして舞台中央では藤十郎さん(戸無瀬)と壱太郎クン(小浪)がセリ上がる。壱太郎クンは愛らしく、何がなんでも力弥のもとへ、という強い意志が感じられた。藤十郎さんには母親の大きな愛が溢れていた。奴・可内の隼人クンはどことなく錦之助さんに似ていた。やっぱり歌舞伎の父子って似るんだなあと改めて思った。
「極付幡随長兵衛」
何度も見ているのに、なぜか全体に新鮮な気持ちがした。
まず「公平法問諍」は劇中劇以上の迫力があって見応え十分。又五郎さんの公平が立派で客ウケもよかった。慢容上人の橘三郎さんが軽妙で
動きも軽くて楽しめた(橘三郎さんの踊りは初めて見るかも)。騒動にとまどう劇中劇の立派な公平とその役者(劇中劇の役者)とのギャップが可笑しい。
坂田金左衛門(吉之丞)が登場してからは侍と町人の身分差が強調される。理不尽でも、そういう時代だったのだと思わされた。
吉右衛門さんが通路に現れたらしく、1階席からどよめきと拍手が起こる。やがて3階からもその姿が見える。期待にわくわくして大きな拍手を送った。大きくて頼りがいがあって、カッコいい。
長兵衛が金左衛門をたしなめている間、劇中劇の舞台後方で頼義(児太郎)の家臣2人(芝喜松、中村福太郎)が本物の侍すなわち金左衛門に対して手をつきながら様子を窺うように見ているのが<らしく>てよかった。ところで、芝喜松というお名前に「あれ?」と思ったら、今年国立劇場の研修を修了して梅花さんに入門した方だったのね。三代目芝喜松さん、どんな役者になるか注目したい。
又五郎さんは、二幕目の役が子分の出尻清兵衛で、公平から一転、コミカルな味を出していた。
休演の情報が入って心配していたが、魁春さんのお時が見られてよかった(鼻血が止まらなかったとのことは未だちょっと心配)。夫の覚悟を察し黙って見送る妻の悲しみと覚悟、身支度の終わりに、袖口のしつけ糸を抜いて夫の顔を見上げるその瞬間が一番胸にぐっときた。
さて、その覚悟も、子供に行かないでくれとすがられ、苦しい表情の長兵衛、それを振り払うように唐犬に長兵衛としての意地・名誉を語る。子供への思いを断ち切るように、突き放す。ここはやはり泣ける。

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