歌舞伎ミーハー観劇記

2018年4月26日 (木)

一世一代の悪の華:四月歌舞伎座千穐楽夜の部

426日 四月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
180426kabukiza 仁左様の一世一代は
20096月の「女殺油地獄」以来だろうか。そしてカーテンコールも多分あの時以来。あの時はやっと開いた幕の中に与兵衛の姿はなく、お吉が倒れたままという見事なカーテンコールに万雷の拍手が送られた。

 今回は「これぎり」で幕が閉まった後、拍手が鳴りやまない。松嶋屋~の掛け声もさかんにかかる。仁左様は出てこないんじゃないかと思いつつ拍手していると、ついに幕が開いた。身なりを整えた大学之助が舞台真ん中で三方向にお辞儀をする。感動して涙が出そうになった。

最後というこちらの意識がそう感じさせるのか、いや、実際そうだったのだろう、大学も太平次も悪がグレードアップしていた。そして仁左様が楽しそう。愛嬌と冷酷さを交互に見せる太平次、高笑いする大学、本当にのびのびしていた。そのせいか、あるいは仁左様の爽やかさなのか、南北のドロドロは薄いかもしれないが、私にはほどよい感じだった。子供の場面もつらいながらこれまでよりは…。
これだけ魅力的な悪はそうそうはない。
芝居そのものもテンポよかったし、他の役者さんもみんなよくて、大満足。


仁左様は、太平次の女性について、利用するだけで惚れたことがないのだろうと筋書きで言っている。確かにそうかもしれないけれど、女房には利用するだけではない特別の感情があったのではないかと思いたい。自分で手を下さなかったことがその理由なんだけどね。私の勝手な願いである。

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2018年4月20日 (金)

四月歌舞伎座昼の部

414日 四月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

昼の部は長いなあとおそれをなしつつ観劇したが、案外長さは感じなかった。夜の部もそうだったが、一幕一幕が1時間前後だったのとその割にブツブツ切れる感じがなかったのがよかったと思う。
「西郷と勝」
西郷の3つの感動に共感を覚えた。
雪の富士を見た時。日本人に生まれてよかった。現在の私でさえ富士山が見えると日本人でよかったとの感慨を覚えるのである。鹿児島の西郷さんが富士を見ての思い、どれだけのものだったろうと胸が熱くなった。
御殿山から江戸の町を仰ぎ見た時(「仰ぎ見る」と言ったと思うけれど、聞き違いかも)。図面の上だけで、こことこことここから攻撃すると決めたのは間違いだった。江戸の町の広大さ、そこには人が住んでいる。そうだ、図面からは人の息吹は感じられない。目の前に町を見てこそだ。
イワシ売りと長屋の住人の喧嘩を見た時。政治のことなど何も知らない無辜の人たち、五十文にこだわって家族の生活を支えている人たちが明日は火の海に巻き込まれる。恐ろしいことを考えたものだ。
「実に戦争ほど残酷なものはごわせんなあ」(正確なセリフじゃないかも)には思わず拍手が起きる。
などなど、長い西郷(松緑)のセリフには説得力があった。涙が出た。しかし一方で、慶喜に対する評価には首をかしげた。敵前逃亡については現代でも色々言われていて、なるほどと頷ける説もなくはないけれど、西郷のこの評価はどうかなあ。
松緑さんの中に垣間見える陰影が西郷の豪快さに深みを加えて、とてもいい西郷だったと思う。
私の勝手な想像として勝は鋭さがあると思っていたんだけど、錦之助さんは鋭さというよりは鷹揚で包容力がある感じだった。染五郎×亀治郎の「竜馬がゆく」では、錦之助さんが西郷だったんだなあと懐かしく思い出しつつ。

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2018年4月12日 (木)

四月歌舞伎座夜の部

48日 四月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
最初に見たのがあの地震の6日前、お芝居自体のインパクトに公演中止となったことが相俟って強烈な印象が残っている。そして1年後の4月公演はなんと3度もリピートしていたから(それは忘れていた。しかし6年前はまだ元気だったんだなあ、私も)、今度で4回目となる。
「絵本合法衢」
今までの2回(一応1公演を1回として)に比べて面白さが増したような気がしていたが、自分の感想を読み返すと2回とも今回に劣らず面白く興奮していた。お話自体はとにかく人が死ぬ。これでもかこれでもか、というほど善人側のほぼ全員が大学之助と太平次の手にかかる。大学はどうしたらいたいけな子供さえも平然と手にかけるような冷酷・残忍な人間になったのか。人面獣心と言うが、獣よりひどい。生まれた時はかわいい赤ん坊だったろうに。何があったら人間こうなるのだろう(「悪の種子」だろうか。この本、父の蔵書にあったが、読みそびれたので、タイトルだけから想像)とついつい考えてしまう。それに、あの場面はどうしても好きになれない。だけど、こんなに面白い、また一幕一幕が短い割には堪能できるのは、ひとえに仁左様の<悪の華>の魅力に尽きるのではないだろうか。というか、あんな物語、主人公が魅力的でなければ成り立つわけがない。その魅力を楽しめばいいのだ、多分。

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2018年3月30日 (金)

三月歌舞伎座夜の部

325日 三月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
千穐楽のつもりでいた。なぜ垂れ幕がかかっていないの?とずっと疑問だった。千穐楽は明日か。翌日、よんどころない用事で歌舞伎座前を通ったら、やっぱり垂れ幕がない。垂れ幕やめちゃったのかしら、そんなはずない…そこで調べたら27日が千穐楽なのであった。
「於染久松色読販―小梅莨屋の場、河原町油屋の場」
開幕直前、突然眠気がさしてきて、やばい!! 案の定、ところどころ沈んでしまった。玉様のお六も仁左様の喜兵衛もはじめてなのに。
ということで、莨屋で覚えているのは、仁左様が早桶を蹴とばしたところくらいまで。物語の重要部分は飛ばして、仁左様の凄み、玉様の気だるそうな伝法、底辺にいてもかっこよさ、美しさは失われていない。仁左様が早桶を蹴とばす場面、花道でのカミソリを口にした引っこみ、決める場面がすべて(意識のあった範囲で)魅力的だった。
油屋では強請が失敗に至る過程が描かれるが、お店でのお灸の場面等、何度見ても面白い。失敗した2人がバツが悪そうに、しかし開き直って籠を担いで引っこむのが、<らしく>て印象に残った。仁左様の後棒の担ぎ方がかっこいい。
「神田祭」
濃密な空気が漂うコンビと言えば私は菊・時を思うが、仁左・玉コンビの間に漂う空気は菊・時の濃密さとはちょっと違うような感じを受ける。前者には長年の夫婦としての深い安心の空気、後者にはまだドキドキがおさまらない恋人の空気と言おうか。もちろん、二組とも強い信頼が根底にはあるんだけど、仁左様と玉様がこれだけの近しさで寄り添うのを見るのは初めてだからだろうか(若い時代の2人は見ていないし、先月は一応兄妹だったし)。
仁左様は美しく爽やか。玉様は美しく色っぽい。とにかく2人の美は絵になる。観客サービスもたっぷりで、仁左様が頬をすり寄せたときにはチュってするんじゃないかと思ったくらい。そういう中で2人とも江戸の鳶頭・芸者の粋に溢れていたのがたまらなく素敵だった。

ここまで見て帰った人がけっこういて、次の「滝の白糸」はちょっと空席が気になった。

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2018年3月21日 (水)

「本蔵下屋敷」「髪結新三」

318日・20日「本蔵下屋敷」「髪結新三」(国立劇場大劇場)
180321sakura 18
日の観劇では花粉症がひどく、ついに薬に頼ってしまったせいか、眠くて、「新三」のいいところをかなり見逃してしまった(新三が忠七の髪を整える場面とか、梅枝さんの紙縒りとか、傘尽くしとか、勝奴が鍵をとぼけるところとか)ため、急遽「新三」のみ20日にリベンジ。でも、結局20日もところどころ…(なんでこんなに眠いのか、家にいても眠い)。まあ、18日に見逃したところはちゃんと見たから2日の合わせ技。
「増補忠臣蔵 ―本蔵下屋敷―」
作者のわからぬ増補であるし、いい加減な設定だということではあるが、それでも二段目、三段目、九段目とのつながりある外伝という風で面白かった。
悪役の橘太郎さん(井浪伴左衛門)がよかった。ワルの中に愛嬌があり、まさに歌舞伎の悪役。もう1人の悪役荒五郎さん(高木平馬)は声に表情があって、こちらもよかった。
本蔵が亀蔵さん(片岡)は神妙でしっかり筋が通っていて、案外ニンに合っていた。
桃井若狭之助の鴈治郎さんも、直情的な面と忠臣を思う心がよくあらわれていて、万感こもった「長の、長の暇を遣わすぞ」のセリフには大いに感動した。その一方で、ほんのちょっとだけだがテンション高すぎる気がしないでもなかった。もっとも、若狭之助ってそういうテンションの人なんだろう。
この物語でも「未来で忠義を尽くしてくれよ」と「未来」が出てくる。若狭之助が本蔵を斬ると見せかけて伴左衛門に刀を振りおろし、本蔵の縄目を切った時には数人の拍手が聞こえた。
梅枝さんの三千歳姫は古風。筝唄は梅枝さん自身が歌っていたのだろうか。よくわからなかった。私は以前から阿古屋を梅枝さんが受け継いでほしいと願っているのだが、さらにその感を強くした。八重垣姫も見たい。
「梅雨小袖昔八丈―髪結新三―」
今日の観客席は、そこ、そんなに可笑しい?というほどよく笑うし、反応がいいと18日に思ったら、20日も同様だった。
権十郎さんの加賀屋藤兵衛は、「結納金の三方を以て白子屋に入る時片手で持つようにしている」とプログラムに出ていた。本来両手で持つ重さだろうが、位取りを意識して片手にするとのことで、役者さんってそういうところにまで気を遣うのね、と感心した。のだが、白子屋の戸口では両手で持っていたような気がする(見間違いかしら? 花道は見逃した)。

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2018年3月13日 (火)

三月大歌舞伎昼の部

310日 三月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
228日以来、家に引きこもっていたわけではないけれど、電車に乗って出かけたのは10日ぶり。
「国性爺合戦」
前に見た国立の通しでの記憶が強いせいか、渚は東蔵さんというアタマになっていたため、東蔵さんの老一官、秀太郎さんの渚という組み合わせが何となく嬉しかった。それなのに、肝心の老一官と錦祥女の再会の場面、寝てしまった。いい場面なのにもったいないことをした。
秀太郎さんの継母とはいえ母の愛の強さ、日本人としての矜持、しゃんとしたその強さに胸が震えた。扇雀さんは意志が強そう。錦祥女はもっとたおやかな感じという印象をもっていたが(私の中では雀右衛門さん)、自分の命を捨てる覚悟に至る錦祥女の芯の強さが前面に出ているのが案外悪くなかった。このお芝居、見るたびに、女性の物語じゃないかと思う。今回はとくに渚が主役じゃないかと思った。
愛之助さんの和藤内は力強かったが、やや小ぶりで、甘輝への怒りももっと強くてもいいような気がした。
芝翫さん(甘輝)は威風堂々、中国風の拵えがとても似合っていた。甘輝本来の心根の優しさも感じられた。
和藤内の大刀をめぐる下官たちのチャリ場は、カーリング女子のもぐもぐとそだね~。
「男女道成寺」
聞いたか坊主たちが上人(明石坊)を呼ぶと、友右衛門さんが出てきて、先代雀右衛門さんの追善狂言であるとの口上を述べた。先の幕間に大間で先代の祭壇に手を合わせたばかりだったのに、「ああ、追善狂言だったのか」と口上で気がつくとは情けない。友右衛門さんは口上のみの登場だったが、所化の中に廣太郎クンがいたのは先代もお喜びじゃないかなと思った。所化は他に、歌昇・壱太郎、米吉、橋之助、福之助、男寅、竹松と若手がいっぱい。
松緑さんは顔が小さい。男とバレるまでの雀右衛門さんとの踊りでは、雀右衛門さんの全身が可塑的と言いたくなるようななめらかな柔らかさで色気があるのに対し、松緑さんはややしゃきしゃきした印象で、女に化けた男の踊りという感じをまんま受けた。
雀右衛門さんの最初の引き抜き、京純・京由の後見2人(京由さん、後見をやるまでになったのね!)がタイミングをはかり、見事成功。京純さんが糸を抜き、京由さんがその糸を片付ける。抜く糸の数が多いことにちょっと驚いた。
雀右衛門さんがどことなくぎこちないような感じを受けたのと、鐘への思いが2人ともちょっと薄いかなとは思ったが、雀右衛門さんの美しさ、松緑さんのメリハリで、踊りは十分楽しめた。

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2018年2月28日 (水)

二月大歌舞伎夜の部

225日 二月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
この日が千穐楽だということをすっかり忘れていた。大間は初日とはまた違った雰囲気だが、奥様方で華やか。北大路欣也さんのお顔が見えた。
「熊谷陣屋」
幸四郎さんの熊谷は重厚感にやや欠けると思ったが、それは若さの故だろう。しかし考えてみれば熊谷の実年齢に近いのは父白鸚でも叔父吉右衛門でもなく新幸四郎であるはずだから、ベテランの重厚な演技に慣れていたこちらの見方を変えればそれは気にする必要はないのかもしれない。むしろ、幸四郎さんの年齢でこれだけのものが出せるのは素晴らしいと思った。ただ、前半ちょっとうるさいような気もした。後半、首桶を持ってきてからは無常感が漂い、時折吉右衛門さんを思わせて、とてもよかった。
魁春さん(相模)との夫婦にも違和感はなかった。それまでは藤の方に同情していたのが、実は我が子と知り、その首を抱く姿に母の愛・悲しみ、武士の妻としての心得すべてが滲み、哀れであった。相模は来てはいけない陣屋を訪ねたことで夫の叱責を受けることは重々承知、それだけに堤軍次(鴈治郎)に縋る気持ちもよくわかった。
軍次もその気持ちを受け止めながら主人の言いつけは絶対という揺れをよく見せていた。万事控えめに仕事をこなし、主人の出家を万感の思いを込めた表情で見送るのが印象的だった。とてもいい軍次だったと思う。
菊五郎さんの義経はおっとりと上品。自分の命令で我が子の命を奪わなくてはならなくなった熊谷だが、この時代ならそれは当然のことだったろう。しかしその当然は冷淡なのではなく武将としての器で評価しかつ熊谷夫婦を哀れに思い、出家を認めたという気がした。
左團次さんの弥陀六は、義経を救ったことへの後悔よりも敦盛が救われた喜びが大きい印象を受けた。
雀右衛門さん(藤の方)はやっぱりお姫様感が強い。身分の高さを感じた。
「壽三代歌舞伎賑 木挽町芝居前」
180228iwaimaku_2 場内暗くなり、最後までライトの当たっていた祝い幕も闇に包まれ…パッと明るくなった。芝居小屋の前。床几に座る我當さんの姿が目を引く。びっくりするほど痩せられてはいたが、嬉しそうな表情でセリフを口にされたのが私も嬉しかった。
舞台上、両花道、目がいくつあったらいいのだ。もっとも、私の席からは花道は少ししか見えなかったけど。人間国宝4人――藤十郎、菊五郎、吉右衛門、仁左衛門が舞台に揃う。しかも仮花道には東蔵さんもいる。
襲名披露の3人は両花道に勢揃いした男伊達・女伊達のツラネをいちいちそちらを向いて聞いていた。ツラネが終わり全員が舞台に並ぶと、梅玉さんと玉三郎さんが登場。人間国宝計6人、なんと豪華な。藤十郎さんの音頭で客席も一緒に手打の後、全員が小屋に入り、そして3人だけの口上となった。
こういう形の口上もいいものだ。

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2018年2月16日 (金)

二月大歌舞伎昼の部

212日 二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
2週間、ほぼ引き籠り状態で迎えたこの日。やっぱり歌舞伎座はいいなあ。特別な場所だわ。
「春駒祝高麗」
中央大ゼリから梅丸(喜瀬川亀鶴)・梅枝(大磯の虎)・梅玉(工藤祐経)・米吉(化粧坂少将)の4人が登場。それだけでわくわく。梅玉さんの上品で大きいこと、梅枝さんの貫録、若い2人の初々しさ。梅丸クンが師匠にお酒を注ぐところ、どきどきしてしまった。
仮花道から又五郎さん(小林朝比奈)、本花道からは錦之助(曽我十郎)・芝翫(曽我五郎)の2人が現れる。又五郎さんの踊りは、奴凧が空で舞っているように見えた。錦之助・芝翫の曽我兄弟は思いのほかよかった。舞踊のみでセリフなしかと思っていたら、兄弟と祐経の間で言葉が交わされていた。ラスト、後見が祐経の後ろから手形をぽんと投げるのが舞踊らしい感じだった。
15
分と短い舞踊だが、十分堪能できた。
「一條大蔵譚」
一番印象に残ったのは秀太郎さんの鳴瀬だ。大蔵卿に刺された八剣勘解由の背に、鳴瀬がほぼずっと手を当てている。そして自害して倒れる瞬間、夫のほうへ手を伸ばし…、その手は届かなかったのではあるが、こんな鳴瀬は初めて見た(ような気がする)。この芝居を見るたびに、鳴瀬はどうしてこんな男と結婚したのだろうと不思議だったが、今回、その理由はわからなくても夫への愛情がしみじみ伝わってきて、より哀れに思う反面、何かほのぼのした気分にもなった。秀太郎さんは「河連法眼館」での静御前でも驚かされたが(静は正妻ではなく愛人、その愛人感がとても可愛らしかった)、今回もびっくりさせられた。
そういう妻をもつ勘解由(歌六)、どこまで強欲なんだ。しかし歌六・秀太郎夫婦とはなんと豪華な配役だろう。
松緑さん(吉岡鬼次郎)の動きがきれいで、勘解由との立ち回りは舞踊のように見えた。孝太郎さん(お京)は控えめながら忠義心と女性らしさが出ていた。
幸四郎さん(まだ馴染まない、つい染五郎さんと…)の大蔵卿は、心の奥に悲しみが流れているのをも感じたが、全体的には作り阿呆をしていても爽やかな大蔵卿、という印象かな。勘解由の首は切った後すぐにもって出ると笑いが起きるところだが、染五郎さんはほどよい間をあけていた。
時さまの常盤御前は、大蔵卿が友切丸を出したところでやや驚きの表情を見せていたが、すぐに穏やかな顔に戻っていた。
この物語って、登場人物が全員、それぞれ異なる悲しさをもっているんだなあと感じた。
それにしても、たまには「曲舞」を見せてほしい。2009年の浅草歌舞伎以来少なくとも東京では「曲舞」はかかっていないんだもの。

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2018年2月 5日 (月)

1月分積み残し②:国立劇場千穐楽

127日 「世界花小栗判官」千穐楽(国立劇場)
14日の初見では、澤瀉屋版とついつい比較してしまって、乗りきれなかったが、今回は全体を知ってから見たせいか、逆に前回より面白く、楽しむことができた。ちょっとしたハプニングはあったが、千穐楽バージョンがあったかどうかはわからない。ただ、碁盤乗りは前より長かったような気がした。
「江の島沖」で風間八郎(菊五郎)が悠然と花道を去る場面は、花道に浪布が敷かれ、水後見が新体操のリボンのように水布を振って波を表す。激しくたかれるストロボは雷光だろうか。ダイナミックな演出に八郎の大きさが象徴されているように見えた。
「浪七内」はやっぱり好きだ。亀蔵(片岡)さんのしぶとい小悪党と松緑さんのすっきりした浪七が話を盛り上げた。松緑さんは足が悪そうだったけれど、しっかりと立ち回りをこなし感動した。坂東亀蔵さんの四郎蔵は、一見真面目で堅そうな亀蔵さんが胴八の計画とずれた間合いで可笑し味を醸すそのギャップが面白かった。橘太郎さんの橋蔵は最初ばばっちくて、代官に化けてもあのパンダメイクではバレバレというところだが、それもこの場面の面白さだろう。
「万屋」では、小萩(=照手姫)が水の入った桶を重そうに肩から下げて花道を歩いてくる場面に「すし屋」の弥助(=平維盛)の戻りが重なった。弥助は空の桶だったから、照手姫のほうが力はあるのかな。
前にも思ったけれど、あらためて権十郎さんがもったいない。女中頭(萬次郎)にいじめられている小萩を助けて優しくしてくれる下男不寝兵衛の役。澤瀉屋版にはない役で、あとでもっと関わってくるのかなと思ったら、それで終わり。でも短い出番に不寝兵衛の人となりを見せたのはさすがだった。萬次郎さんもよく透る声でびしびし意地悪を言うけれど、女中頭としての仕事もちゃんとやっている感じが出ていた。
リピートしてよかった。

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2018年2月 3日 (土)

1月分積み残し①:歌舞伎座千穐楽昼の部

126日 初春大歌舞伎千穐楽昼の部(歌舞伎座)
2月の歌舞伎がもう始まったというのに、こちらはまだ1月分が終わっていない…。
歌舞伎座の前に演舞場へ行って筋書きを買う。24日に入っていなかったため買わないでおいたのだ。幸い、歌舞伎座観劇がこの日に入っていたから。
「箱根霊験誓仇討」
初めて見るので楽しみにしていたのだが、正月公演それも目出度い三代襲名公演の演目としてはあまり弾まないなと思った。面白くなかったわけではないが、初花(七之助)が哀れすぎて、その心が通じて仇討ができたところで(仇討達成の予感で終わる)爽快感や後味の良さがなかった。
勘九郎さん(飯沼勝五郎)はほとんどの時間、足腰が立たぬ状態で辛抱の役だった。敵(刎川久馬:吉之丞)に襲われ応戦した勝五郎が突然立ち上がってジャンプ。初花の願が叶って足が治ったのだ。初花の母・早蕨(秀太郎)が驚くと客席から笑いが起きた。勝五郎は立てることをなかなか認めず、早蕨としばし押し問答が続く。この場面や、仇討の機会を狙うために滝口上野(愛之助)に従ったはずの初花が戻って来た時も散々怒った様子を見ると、勝五郎は長い病で相当心がいじけているなと感じた。
愛之助さんの二役(上野と奴筆助)はどうなんだろう。存在が何となく中途半端な気がしてしまった。
敵役の1人いてうさんはいつも思うことだが、勘三郎さんに顔が似ている。一瞬、勘三郎さんが出てきたのかとはっとした。
「七福神」
暗い演目の後の目出度い踊り。どうというほどでもないのだが、楽しくて正月の演目として安心して見ていられる。
彌十郎さん、少し痩せただろうか。寿老人は品よくきれいだった。門之助さん(福禄寿)の踊りは珍しいかしら、そうでもないかしら。布袋が誰だかわからなかった。高麗蔵さんだったのか。高麗屋っの声がかかったのでそうかなとは思ったのだけど、顔がいつもと全然違うんだもの。こんな高麗蔵さんもいい。鴈治郎さん(大黒天)と扇雀さん(弁財天)のツーショットにミーハーは秘かに「おお」。恵比寿の又五郎さんは飄々として、毘沙門の芝翫さんは立派で、ただただめでたい。
ラスト、7人が3段で宝船に揃う。最初は船が奥のほうにいたので毘沙門と弁財天が見えなかったのだが(3階からだと、奥の高い位置にいる神様は首から上が見えないのだ)、宝船が十分前に出てきてくれたので全員の顔が見えて嬉しかった。

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