趣向の華

2014年8月27日 (水)

趣向の華ファイナル3日目夜の部:ありがとう、又いつの日か

825日 趣向の華ファイナル3日目夜の部(日本橋劇場)
「趣向の華」初期はお盆の頃の日程だったので、昼夜の間に時間をつぶす場所がなく(休んでいるところが多く、また開いている店は同じく時間潰しの客で満杯)苦労したものだなあと過去を懐かしみつつ、時を待った。
いつものように会主3人が浴衣姿で登場し、勘十郎さんが「へろへろです」。染五郎さんが「昨日今日と奇跡的にうまくいった。もっともうまくいったというのは、こちら側の判断ですが」って。いえいえ、本当に素晴らしい公演でしたよ、と心の中で私。
「六斎念仏」
今藤政太郎師の処女作だそうで、染五郎さんは「これができたらカッコいいなというだけで選んでいる。できるという根拠はない」と言うが、それこそ「趣向の華」に相応しいんじゃないだろうか。囃子担当の染五郎さんによれば「(太鼓の)ここへ打ちたくても、違うところに打ってる」と苦心惨憺の稽古だったらしい。ちなみに、染五郎さんと菊之丞さんは今藤門下だったとのこと。
さて、この曲、すごく面白かった。
三味線は勘十郎さんをはじめとする8人、囃子は染五郎・菊之丞・壱太郎さんにプロの女性がお1人(お名前がわからない)。2日目昼の部は同じ演目で囃子の3人に新悟クンが加わっていた。
演奏のメロディー、リズム、スピーディーな展開、迫力たっぷりで圧倒された。囃子はそれぞれ締太鼓と、種類はわからないけどもう1張の筒型の太鼓と2張ずつを担当。筒型のほうはそれぞれ大きさが違い、菊之丞<染五郎<女性<壱太郎の順で大きくなる。大きさによって音の高さが違うみたいだった。
レミラ調というちょっと変わった調子のメロディーはコミカルなような、なつかしいような感じ。今藤師が郷土芸能にインスピレートされたというから、そういう懐かしさが感じられるのかもしれない。「どっこい」という掛け声をかけながらの太鼓リレー打ちは見応えも聞き応えもある。テンポはどんどん早くなっていき、渾身のバチ捌きに私も力が入る。
終わった時には染五郎さん、へろへろになっていた(そういう風に見せたサービス精神かもしれないけど)。
この曲、演奏するほうは大変だろうけれど、もう一度聞きたいな。
「袴歌舞伎 東海道仇討絵巻」
藤間勘十郎こと苫舟先生の作。毎年お楽しみ、様々な歌舞伎演目のパロディが鏤められたバリエーションものと言おうか。この種の演目はもちろん、「赤垣源蔵」も「三軒長屋」も、そしてこれまでの趣向の華の創作演目もすべて、歌舞伎をよく知った人が作るからこその面白さであると思った。
この演目は題名からも想像がつくが、「獨道中五十三驛」のバリエーションである。狂言回しの弥次郎兵衛と北八は染五郎さん、菊之丞さん。場面転換の繋ぎで客席いじりをしたり芝居に入り込んだり。客席を回っている時、2人が1人の男性に何か言葉をかけていて、その時はわからなかったのだが、後で今藤政太郎師が客席にいらしていたのだと気がついた。染五郎さんは2階客席に出現するサービス。本当にサービス精神に溢れているのだ、染五郎さんは。
日本橋を旅立った2人だが、あっと言う間に品川へ(客席笑)。
すると、廣太郎クンと萬太郎クンが刀を交えながらセリ上がってくる。廣太郎クンは萬太郎クン(不破伴左衛門)に殺されてしまう。六角家お家騒動の始まりである。闇の中、不破伴左衛門の父不破道犬(友右衛門)の指図で廣太郎クンのもっていたお家の重宝何とか丸(刀)と何とかの一軸(刀も一軸も名前は忘れてしまった)が盗まれ、そこに残された小柄が証拠の品となる。っていうのはお家騒動モノの定番だからこそ、安心と期待の展開となるのである。
悪人不破を追うのは狩野修理之助。殺されたのは修理之助の師匠だったのだ。修理之助役は玉太郎クン。たくさんのセリフと動きをしっかりこなし、大活躍。この子はやっぱり大した子だと思った。ちなみに、修理之助のほかに狩野元信(歌昇)、銀杏の前(米吉)、浮世又平実ハ狩野雅楽之助(種之助)、おとく(梅丸)という人物も出てくるが、「傾城反魂香」の人物の名前を借りただけで、内容は全然違う。
メモしなかったので、見どころだけ。
一番は岡崎だろうか。例の化け猫である。無量寺ならぬ又平の家で、母親お三婆は実は化け猫。身ごもっている嫁のおとくを殺し、下女お香(男寅)をいたぶって殺す。梅丸クンはここでも品よくかわいい世話女房。男寅クンはすっかり下女のイメージが定着しちゃった。というのも、国立劇場「梅初春五十三驛」でも、第4回趣向の華「大和神話武勇功」でも下女役だったから。男寅クンが玉太郎クンを案内して客席歩きをしながら又平の家へ向かう途中、「(趣向の華がなくなって)来年の夏休みはどうしましょう」とか、左團次ブログを紹介して「アクセス増やして」とお願いしたり、その当人は「軽井沢でゴルフです」って笑わせたり、すましてなかなか巧みに話を進めるのが楽しかった。
化け猫は芝雀さん。猫のぬいぐるみと一緒の芝雀さんは、いつもと喋り方が違って、あの細やかな愛情に溢れる女性を演じる芝雀さんにこんなに無気味感が漂うものかと感心した。お三婆が行燈の魚油を舐める仕掛けは以前に聞いていたけど、わかっていてもうまい仕掛けだなあと思う。途中、ふと気がついたら三毛猫の衣裳に変わっていた。

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2014年8月26日 (火)

趣向の華ファイナル3日目昼の部

825日 趣向の華ファイナル3日目昼の部(日本橋劇場)
今日は昼夜通し。最初に菊之丞さんから、壱太郎さんこと春虹先生(どうしても、みんな先生って言いたいらしい)の「ゆきとけてまことのとくり」、次は落語をもとにした「三軒長屋」、追い出しは常盤津で、という演目紹介と、いつもの3項目の注意があった。
「袴歌舞伎 雪解真徳利」
素晴らしかったです。まず脚本がいい。春虹「先生」と言われるのも決してダテじゃない、と頷ける。
「赤垣源蔵 徳利の別れ」に大幅に手を加え、新歌舞伎風にしたという先生の弁がプログラムに書かれているが、私は赤垣源蔵のエピソードを知らないので、新鮮な気持ちで見入った。そして新歌舞伎として歌舞伎座など本公演にかけても十分耐えうると思った。先に言っちゃうけど、いつもいつも同じような演目ばかりでなく、たまにはこういう新作(「白虎隊」もね。ほかにももっと推薦演目はあるよ)を取り上げてほしい。
まず、壱太郎クンの芝居がかかった(?)声で、松の廊下の刃傷沙汰、そして討ち入りのあったことをごく簡単に紹介し、その討ち入りに加わった「1人の男の物語である」と結ぶ。これが案外よかった。
源蔵の兄・汐山伊左衛門はすでにこの世になく、その妻おゆみ(米吉)は病の床に臥せっている。伊左衛門の妹雪枝(梅丸)とその夫滝川要(廣松)がおゆみを慰めているところへ髭の沢庵(廣太郎)が診療にくる。沢庵は医者でもあり、吉良家の間者でもある。沢庵が汐山家の様子を伺っていると、源蔵(種太郎)が徳利をもって訪ねてきた。源蔵はこのたび西方に旅立つことになったから亡き兄に別れを告げたいと言うが、主君の仇を忘れたかと責めるおゆみと罵る要に遮られる。しかし、兄を慕い夫のひどい言葉を謝罪する妹の雪枝のはからいで源蔵は兄の位牌の前に出ることができ、本心を吐露する。それをこっそり聞いている沢庵。
源蔵が汐山家を辞した後、残された徳利の結び文を見たおゆみにはすべてが腑に落ちる(最初から、そうじゃないかと察してはいたらしいのだ)。初めて源蔵の本意を知った要はすぐにでも謝りに行きたいと言うのをおゆみに、今行ったら計画がバレる可能性があると止められる。
いっぽう沢庵の報告を受けた吉良家の付人山口新吉郎(蔦之助)の前に菰をかぶった非人(隼人)が現れる。非人は実は高田群兵衛で、四十七士の中に入っていない浪士であった。討ち入りを阻止しようとする新吉郎は群兵衛の手にかかる。
四十七士が無事に本懐を遂げた後、要は源蔵を待ち、心から詫び、源蔵を見送る。
源蔵の種之助クンは袴歌舞伎のため、顔の若さはどうしようもないが、おとうさんを髣髴させる落ち着いた肚と演技で源蔵の心情を余すところなく見せていた。この芝居、若手でやるなら今度は拵え付きで、さらにはオヤジ様世代の又五郎さんで(大人たちがやっても絶対いい)、そして種之助クンがもっと大人になったときに、もう一度見たいと熱望するものであります。ラスト、花道を引っこむ種之助クンは泣いていたと思う。私も泣いたよ。
廣松クンは立役でちょっと声が高くなると友右衛門さんによく似てくるなと思った。源蔵の本心を見抜けなかった悔いと真摯な謝罪が心を打った。
隼人クンは非人として2度新吉郎の前に姿を現すのだが、2度目、菰をぱっと後ろへ投げ捨てて顔を見せる。やはり二枚目で華があるから、この演出は引き立つ(演出も春虹先生)。そばに植わっていた竹をスパッと切り、葉を落し、槍がわりにする。討ち入りに参加できない者の悲しみと意気地が存分に伝わってきた。隼人クン、うまくなったし、カッコよかった。蔦之助さんも声よく滑舌よく姿よいから、2人の対峙が面白かった。
廣太郎クンは、前夜のトークでも三枚目担当が定着したと言われていたが、ここでもただ1人、コミカルな役だった。
袴歌舞伎での女方は鬘もつけない。しかし米吉クンも梅丸クンもちゃんと女性に見えた。米吉クンは長兄の妻としての落ち着きを見せ、梅丸クンは末っ子としての初々しさ、長兄亡きあと、2人しかいない兄妹としての情感がにじみ出て、愛おしかった。
静かな町に「わらびもち~」の声が響く。玉太郎クンだ。声だけの出演かと思ったら、ちゃんと姿も見せた。物売りを登場させて討ち入りとは別の世界(討ち入りがこういう平和な時の中で行われると言おうか)を感じさせるのも、春虹先生、うまいと思った。

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2014年8月24日 (日)

趣向の華ファイナル2日目夜の部

824日 趣向の華ファイナル2日目夜の部(日本橋劇場)
今日の昼の部は明日の夜の部と演目が一緒だからと、パスしたけれど、プログラムをよく見たら、微妙に出演者に違いがあり、「しまった!」とは後の祭り。でも、2日続きの昼夜通しは体力的に難しかったろうから、仕方ない。
今日は、まず勘十郎さんが1人で登場。おお、その胸には赤ちゃんが。勘十郎さんのご長男雄大クンか。今日昼の部と明日夜の部の「東海道仇討絵巻」出演者に雄大クンの名前が載っていたので、もうちょっと大きい子かと思っていた。でも考えてみれば、そんなはずはないのよね。昼の部を見た方によれば、菊之丞さんのお嬢さんと雄大クンはともにおとうさんに抱っこされて名札を立てて登場したとか。雄大クンはその後もロビーで見かけたが、とってもおとなしくてにこにこしていて、ほんっとにかわいい。でもその雄大クンも何年後かには厳しいお稽古を始めるのね。
勘十郎さんがいったん引っこみ、今度は雄大クンを置いて再登場。演目の紹介をした。「小梅と一重」は本来長い演目だが、その一部を切り取った。芸をやる人間としてこうなければならないという言葉があって、歌舞伎の人にぜひやってもらいたかった。
「怪談蚊喰鳥」は大叔父宇野信夫(大伯父? そういえば、昨日も宇野信夫が大おじだと言っていたが、いずれにしてもすごい家系だな)の作品。幽霊がこわいか、人間がこわいか、後味の悪い作品で、「もう終わっちゃうの?」という感じ。現・藤十郎さんが東横時代にやって面白かったもので、孫の壱太郎クンが同じ役をやる。
「花の万華鏡」は宝塚の演出家・原田諒さんが書いたレビュー。趣向の華の情報が出た時、「麗美遊」と書いてあって、なんだろうと思っていたのだ。プログラムで宝塚という文字を見て「レビュー」だとわかった。うまく当てたよね。三味線にドラムセットまで入る、趣向の華でも今までになかった趣向だとのこと。
注意事項3点セットは①場内非常灯が消される(昨日、これを忘れていた)、②「携帯切りましたか?」昨日はマナーにすればよかったが、今日は電源を切る。最初の2つの作品が静かなものなので、鳴ったら目立ちますよって。③飲食禁止。みんなが一生懸命やっているので、飲み食いしながらでは可哀想。とのこと。
「小梅と一重」
真山青果作の新派の狂言。袴新派ではなく、化粧も衣裳も鬘もつけての本格的な芝居。若い歌舞伎役者で、これだけ新派の味が出せるものかと大いに感心した。
歌舞伎役者澤村銀之助役の歌昇、芸者蝶次の米吉、芸者小梅の壱太郎、男衆の萬太郎、適材適所で役の心をよく摑んで見事な演技だったが、特筆すべきは一中節師匠一重役の梅枝クン。銀之助、蝶次、小梅の三角関係を納める役どころなんだが、貫録といい、その心といい、小梅を諭すセリフといい、実に見事だった。セリフのせいか顔立ちのせいか、いやいやそれだけではあるまい、しばらく見ているうちに玉三郎さんに重なり、梅枝クンが「ふるあめりか」をやったらどんなにいいだろうか、ぜひ見たいものだと思うようになった。そんなこと考えたこともない方、この梅枝クンをご覧ください(って、たった1回の、この日だけの公演。なんともったいない!!)。私もこの梅枝クンを見るまで、そんなこと考えもしなかったわ。
小梅の壱太郎クンもとてもよかった。一重に「本当はただ酔っているのではなく演技している」と見抜かれる程度の酔いがうまい。そして梅枝クンとの本気のぶつかり合いは、心がぞくぞくするような緊張感に満ち、ひどく感動した。カズくんは顔が二代目八重子さんにちょっと似ていて、声は全然違うけど、玉三郎×八重子みたいな感じだった。米ちゃんはさしずめ瀬戸摩純さんあたりだろうか。
「名人になるには女を慎め」とは、銀之助が尊敬する師匠から受けたアドバイス。銀之助はそれを、「女子供を頼りにしてはいけない。自分の力で名人になれ」と解釈する。そして、家柄も血筋もない自分を世に出してくれた小梅との別れを決意するのだ。歌昇クンの熱演からは、歌昇クン自身がこの「芸は家柄や血筋じゃない。自分の力で」という言葉をしっかりと胸に刻んでいることがわかる。銀之助を失いたくない小梅の「誰のおかげで出世したんだい」との毒づきもまた、逆の意味で胸に残る言葉であった。趣向の華が、単なるお遊びでは決してなくて、若い世代に技法のみならず精神もまた勉強させる場であることが痛感されるシーンであった。
ここに茶屋女将として梅乃さん、茶屋の男として蔦之助さんが出てきて、2人ともやっぱりうまかったのが、嬉しかった。
きわめてレベルの高い芝居で、「白虎隊」とともに、なんとか歌舞伎座(せめて演舞場でもいい)で上演できないものだろうかと思う。趣向の華だけで、それもたった1回で終わらせるのは本当にもったいない。もっともっと多くの方に見ていただきたいのだ!!

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2014年8月23日 (土)

趣向の華ファイナル1日目

823日 趣向の華ファイナル23日夜の部(日本橋劇場)
夏、最大の楽しみ「趣向の華」もとうとう今年で終わり。ファイナル公演だけに、主催者側も全5公演、11演目という力の入りよう。こちらももちろん、全力で観劇、応援の意欲満々で出かけた。
まずは、藤間勘十郎・尾上菊之丞・市川染五郎と会主の3人がいつもの浴衣姿で登場。「思い切り風呂敷を広げたから、本当にこの5分前まで稽古していた」そう。上演の前に注意事項3つあるとのことだから、携帯のこととかだよねなと思っていたら、染五郎さんが「①とにかく公演を楽しむ、②すべてを受け入れる、③つっかえたら拍手でかき消す」って(③は公演終了後の染五郎さんの口上で守られた(^-^;)。もちろん、本当の注意事項は、携帯(電源切らなくてもいいからマナーにって)、飲食禁止、もう1つは何だったかな。
「表裏おうち騒動」(市川染五郎作・演出)
「そうですね」という言葉を主人公にしたお話。袴歌舞伎とは謳っているが、現代語だし、朗読劇みたいな(朗読劇って1回しか見たことないから、たとえが違うかもしれない)、わかったようなわからないような。まったくわからないってわけでもないんだけど、じゃわかった?と聞かれると「う~~ん」。
いかにも染五郎さんらしいものが感じられるんだけど、多分演じるほうもあんまりわかっていないんじゃないか。もっと稽古して伝わるようになったらわかるかもしれない。あるいは、文字で見たほうがわかるかも。ひとうだけ、おばあちゃん役の東蔵さんがうまいと思った。肩をすぼめて座っているだけで、なんか悲しげにも見えるおばあちゃん。
「トークショー」
早速、今の演目について染五郎さんが「20年前に書いた処女作。披露する場はここしかない」。「これだけわからないものをよく書いた。そういう自分を尊敬する。この作品を20年間眠らせて忘れなかった。それを皆様にお見せする自分の勇気に感動している」。「稽古も、これだけついてこない感があるのは…(やっぱりね)。どういう意味かは、皆様に投げかけたということで、皆様の中で…(そういうことなら、やっぱり文字のほうが考える時間もあり、わかりやすいかも)」。「そうですね、はよく使われる言葉。このトークでも何回出てくるか数えてみて」。
と、ここからは趣向の華第1回からの思い出トーク。
まずは1の代表として歌昇、萬太郎、梅丸3人が。歌昇さんは当時高校生だったよね?との問いに、歌昇クン思わず「そうですね」。早速の「そうですね」に会場大ウケだった。歌昇クンの役柄としては、いつも「最後のいいとこ取り」で、みんなのブーイングを受けているそう。「ここで勉強させてもらって、今がある」。萬太郎クンは、1回目はいい人役だったが、だんだん悪役になって、最後まで生き残れない。梅丸クンは7年前は11歳だったが、喋り口調は変わっていないそうだ(梅丸クンは本当に貴公子のような美少年だなあ)。1年目は亀寿さんに殺され、2回目では壱太郎さんに、今回は芝雀さんに殺されるんですって。私自身は残念ながら1回目はアンテナに引っかからず、見ていない。
2代表は男寅、廣松2人。勘十郎さんによると、化け猫モノでは必ず被害者が出るが、この回(「血染錦有馬怪異」、よく覚えてるよ)は男寅クンが被害者になった。男寅クンは何かの事情でお祓いに出なかった。そしたら39度の発熱で、金縛りにあったそうだ。男寅クンのおかげで舞台は無事だった。笑い話のように話しているが、実際は大変なことになっていたんだとか。以来、男寅クンは必ずお祓いをしている。ちなみに、私は男寅クンが挑戦した「鷺娘」がとても印象に残っている。
廣松クンはジャグリングを披露した(これもよく覚えているよ)。ジャグリングは役のために1から始めた。師匠は蝶之介さん。そういえば、蝶之介、蝶三郎、廣松の3人による皿回しで盛り上がりましたっけ。

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2013年8月22日 (木)

趣向の華 若木公演

820日 趣向の華 若木公演昼の部(内幸町ホール)
発売当日、電話をかけるのに不自由な状態にあり、ついに断念したこの公演。ところが、なんと、チケットを譲ってくださる方がいらっしゃって、昼の部を見ることができました!! 第2回公演を見て、夏の最大の楽しみになっていたこの公演、今年もたっぷり楽しむことができたのは本当に本当にありがたいことです。
で、前日早く寝ようとしたのに、興奮しているせいか、ぜ~んぜん眠れない。仕事を取り出したり(たいてい、仕事し出すと眠くなる)、梅酒をロックで2杯飲んだり(あんまり飲みすぎると体調に差し障る。梅酒が一番いいかなというわけで)、録画したドラマを見たり(通常、15分見ると眠くなる)、色々手を打ったのにまったく眠くならない。焦れば焦るほど眠れない。こんなこと、めったにないのに。それでもどうにか入眠し、結局3時間ほど眠って朝になった。
ちょっと早めに会場に着いたら、友右衛門さん一家が楽屋入りするのに出会った。
開演時間となり、待ってました、菊之丞、染五郎、勘十郎のお3人が舞台に登場した。染五郎さんは「すべてを受け入れて楽しんでください」。勘十郎さんの「命のある限り弾いて打って」に菊之丞さんがちょっとチャチャを入れ、勘十郎さん「崩壊しない程度に」ですって。
「二人椀久」
例年、若手役者さんの演奏があるのだが、今年は三味線・勘十郎、鼓・菊之丞、立鼓・染五郎、大鼓・壱太郎のほかはプロの演奏と唄であった。
椀久は踊りだとついつい眠気がさすことが多いから、演奏だけだと絶対キケンと心配していたのに、狂乱の椀久の花道の出、松山のセリ上がり、2人の早いテンポでの舞等々、目に浮かぶようで、寝なかった。
「若華競浪花菱織(わかきくらべなにわのひしおり)」
お楽しみ袴歌舞伎である。今年の作・演出は春虹――すなわち壱太郎クンが初の脚本・演出に挑戦。その壱太郎クンの声でヅカテイストの開演アナウンスが入り、楽しい気分になる。
お話は、「再岩藤」を下敷きにしていて(岩藤に関係する部分はない)、岸和田藩をめぐるお家騒動、盗まれたお家の重宝探しに、お初徳兵衛の駆け落ち話を盛り込み、さらには今年出演予定のなかった梅枝、歌昇、新悟、萬太郎の4人が特別出演でチャリ場を演じるというオマケ付き。楽しくないわけがない。

岸和田藩では先代藩主が若くして亡くなり、今は若年の千代丸が藩主となっている。家老・平井市郎右衛門(友右衛門)が後見役であるが、若い千代丸には厳しく口うるさく感じられている。そんな千代丸を牛耳っているのは、剣術師範の犬神兵部(亀三郎)。千代丸役の梅丸クンが兵部に骨抜きにされた若君を品よくだらしなくとても上手に演じていた。
兵部の命令を受けた鮫島岩次(廣太郎)は花火師又助(種之助)をだまして、平井市郎右衛門を殺させる。ここは又助の名前も含めて、だまし方が完全に「再岩藤」のパロディ。ただ、平井を討つ道具が刀ではなく短銃というのが花火師らしい。実は、又助は素行が悪くて勘当された平井の実の息子であった…それがのちの悲劇へとつながる。

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2012年8月16日 (木)

第4回趣向の華 2日目夜の部②:とにかく楽しかった「大和神話武勇功」

811日 趣向の華2日目夜の部(日本橋劇場)
二幕目二場 同宿屋古那屋の場
古那屋では女中つばさ(男寅)が笑わせる。この女中は、国立の復活狂言「旭輝黄金鯱」で男寅クンが演じた下女・おふくのパロディかなeye 
忍熊がすみれに迫った「あんな青二才やめて自分と一緒になろう」というようなセリフを、今度はおふくが忍熊に「あんな小娘やめて」と迫って、逃げられる。
ここからの筋の順番の記憶がはっきりしないのだけど(違っていたらごめんなさい)、お尋ね者となっている武彦と橘姫をめぐって忍熊は一企みを思いつく。ここからは「當世流小栗判官」のチャリ場のパロディsmile その名も張子の橋蔵(オリジナルは矢橋の橋蔵)はなんと菊之丞さん。すっとぼけた橋蔵と、企みの筋書きを考えた忍熊、大事な役を与えられながら武彦に当身を喰らわされてタイミングをずらす四郎蔵(オリジナルも四郎蔵だっけね)が繰り広げるニセ裁判の可笑しさ。結局四郎蔵が「その証拠は~」と出てきたのは、すみれの父・源太夫(亀三郎)がドンっと足を踏み鳴らした時。これで、種ちゃんの悪巧みはおじゃん。
橋蔵が連れてきた家来役の2人は話が違うと逃げ出す。その家来がなんと春希クンと京三郎さん。女形の2人、突然おすピー風に変身しちゃって、きゃあきゃあ騒ぎながら逃げて行った。いや~ん、あの愛らしく上品な八重垣姫と同じ春希クンとは思えな~いcoldsweats01 
橋蔵の菊之丞さんは花道を引っこむ際、合同公演や松鸚會(染五郎さんの「あーちゃん」見たいよ~。でも、日程的に無理なのだ)のチラシを客席に配り、「みんなあげちまったぜ。ワイルドだろう」。私は歌舞伎で取り上げられるギャグはよほど人気があるんだろうな、といつも思っているが、スギちゃん人気恐るべし(何かのアンケートでもスギちゃん1位だったし)。
さて、場内暗闇の中、鶴彦の幽霊が客席へ。「浴衣買った?」などと客席いじりをしながら最後に「ケータイの電源はオフに」と言って舞台へ。人魂の黒衣が顔の布を上げて下から照らすと、染五郎さんでした(これも、あのパロディ?eye)。
隼人クンは正直、親戚目線で一時はどうなるかと心配したこともあったが、セリフもしっかりしてきたし、芝居もずいぶんよくなってきたと嬉しかった。ま、女形はやらないほうがいいと思うけれど、身長もあるし、立役をしっかり勉強してほしい。
チャリ場は終わり、ここから本筋へ。
源太夫が思いもかけない告白をする。すみれは実は小碓なのだと。配役を見た時、小碓がいないヤマトタケルって?と不思議だった謎がここで氷解。でも、自分が男だって気づかないものかねえ、とこれも不思議だったが、どうやら体も女になっていたらしく(その辺聞きそびれた)、武彦が持っていた秘薬に巳年の人間の血を混ぜて飲むと男に戻るのだそうだ。その巳年はまさに自分、と腹に刀を突き立て名乗り出た源太夫。実は源太夫は以前大和朝廷に勤めていたが、不義(職場恋愛)をとがめられ追放になった。その恨みから皇子を1人かどわかした。それが小碓である。小碓を女の子として育てた一方で、生まれつき手癖が悪い自分の実子は、ある時母親とともに出奔して行方がわからなくなった。色々調べたところ、八十の猛がその息子だとわかった。前非を悔いてすみれに秘薬+血を飲ませ、小碓に戻ったすみれに八十の猛を倒して大和を復活させてほしいと願い息絶える源太夫。
プレ公演で、亀寿さんが「いつも悪役の亀三郎さんは今回はいい人」と言っていたのが源太夫である。
梅枝クンは女から男へ違和感なく変身。まったく、梅枝クンは何をやらせてもうまい。
同三場 知多浜海上の場
同四場 天空の場
小碓は武彦と、目出度く妻となった橘姫を連れて船で大和へと向かう。その途中、大嵐にあい、占い師が一番大事なものを捧げよというお告げを出す。そこで橘姫は自ら海へ飛び込む。

ここからは東蔵さんと梅丸クンの竹本が入る。東蔵さんの語りが素晴らしく力強くて上手で素敵だった。梅丸クンは舞台の進行を見ながら語っていた。

別れの場では新悟クンが辞世の歌を琴を弾きながら歌った。新悟クンの腕前見事。ほんと、新悟クンの清潔で哀れな風情はいい(化粧をしないほうが私は好きだ、なんて言ったらしょうもないか)。梅丸クンも竹本を一時中断して琴を弾いていた。
2人とも素のままでも女形の拵えを想像しても、いい姿だ。
姫が身を投げると、
3匹(っていうのかな)の烏天狗が現れる(椿説弓張月のパロ?)。鷹之資・玉太郎・金太郎という本当にかわいくて客席をメロメロにしてしまう3lovely
そこへ天照大神(魁春)が現れ、新悟を生き返らせ(?)、小碓を白鳥にして武彦と
3人大和へ飛翔させる。魁春さんはなんか不思議ムードでそのムードが天照大神にぴったり。特製浴衣の反物を翼に見立てての飛翔は、実にうまいアイディアだと感心した。紺地なら買ってもいいのになあと思っていた浴衣地も白地だからこそのここでの活かし方だねっ。


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2012年8月15日 (水)

第4回趣向の華 2日目夜の部①:パロディいっぱい、見どころいっぱい「大和神話武勇功」

811日 趣向の華2日目夜の部(日本橋劇場)
開演前、例の声bleahで「みんな、聞いて聞いてぇ。そこ、お喋りやめて。本日はクソ暑い中第4回趣向の華にお運びいただきありがとうございます。そこ、聞いてぇ」という、昼の部とは違う調子で誘導灯消灯に関するお願い、携帯等の注意があった。「ケータイ、これだけ言っても鳴らす人がいるんですよ。あなた、あなたですよ」だって。
「袴歌舞伎 大和神話武勇功(やまとしんわぶゆうのいさおし)」
「ヤマトタケル」(古事記オリジナルはよく知らないけど、オリジナルにかなり忠実だと思われるスーパー歌舞伎の「ヤマトタケル」)のパロディを軸にその他色々パロった物語で(どんなパロディがあるか、お楽しみ。気が付かないのもあったかも)、歌舞伎の面白さをぜ~んぶ詰め込んだような感じで本当に楽しかった。年々、苫舟(勘十郎)さんの筆は冴えていく。

序幕 大和国景行天皇館の場
景行天皇(友右衛門)、皇后稲日(高麗蔵)をはじめとして大和朝廷の主だった人々が並んでいる。友右衛門さんは束帯をつけ、高麗蔵さんも薄衣をまとっている。
八十の猛(萬太郎)が詠姫(廣松)を自分の妻にしたいと言い出す。姫は大碓命(梅枝)の妻であるのに、だ。皆が驚く中、猛は大碓も承知の話だと強気である。それでも誰もが納得できないでいると、家来の久磨羅(亀寿)が「これは忠義のために自分が仕組んだことだ」と言って我と我が目を抉り取る。これって、「国姓爺合戦」の発端のところの李蹈天のパロディかなeye 
驚いたみんなが引っこむと、大碓は詠姫の姉・橘姫(新悟)に言い寄る。父の言うことを聞いて仕方なく詠姫と契ったが、本当は最初から橘姫が好きだった。「そなたを手に入れるための計略である」と打ち明ける。私は新悟クンの女形は風情があって好きだが、いろいろデカいなあと改めて思った(身長、手、足)。衣裳をつけるとそのデカさが緩和されるのかな。
自分は小碓の許嫁であり、しかもあんたは妹のダンナじゃないかと激しく大碓を拒否する橘姫(もちろんもっとお上品に拒否します)。この様子を陰で窺っていた詠姫は大碓を責めるがあっけなく殺されてしまう(廣松クンはやっぱり女形路線でいくのでしょうか。芝雀さんの影が感じられる)。その大碓は母親の稲日に矢で射り殺され、稲日は自害する。苦しい息の下、もう1人の息子、幼い時に行方がわからなくなった小碓を探してくれるよう吉備武彦(歌昇)・敷妙(米吉)夫婦と橘姫に託す。そこへ久磨羅が現れ、自分の本性は八岐大蛇であると正体を明かし、大和に滅ぼされた怨みから久磨羅として今度は大和を滅ぼすのだと言う。
序幕二場 同裏門敷妙討死の場
小碓を探す旅の途中、敷妙は敵と戦って命を落とす。米ちゃん、女形としてどんどん力をつけつつある。戦う女であっても品のよさ、柔らかく優しい感じがよい。
序幕三場 吉野山道行の場
まさに「道行」のパロディ。蝶之介さんの熊蘇太郎が逸見藤太に当たる。ノリ地の剽軽なセリフが面白い。なんと、熊蘇太郎が引き連れる花四天の
1人が染五郎さんsmile 一際目立った動きをしてすぐに引っこんじゃった。屋号尽くしの歌が気が利いている。歌に合わせて出演者の屋号が書かれた紙が次々に広げられるのも楽しい趣向だ。出演も紙による紹介もなかったが「松島屋」も歌詞に入っていた。最初にもらったチラシには千之助クンの名前も入っていたんだけど、急遽出演取りやめになったのかしら。
一度引っこんだ染ちゃんが金太郎ちゃんを連れて出て大サービス。
ラスト、歌昇クンの投げた笠は蝶之介さんががっちりキャッチ
goodで拍手喝采。
二幕目 尾張国油ケ淵の場

世話物風になる。尾張の古那屋(耳から聞いただけでは何とも思わなかったけど、文字を見たら那古屋のモジりだよ~
smile)という宿屋の娘・すみれ(梅枝)の許嫁・鶴彦(隼人)は深夜1人、結納の銀を持って向かう途中、すみれに横恋慕する外ケ浜の忍熊(おしくま・種之助)とその仲間の知多の四郎蔵(廣太郎)に襲われ惨殺され、銀も奪われてしまう。出てきてすぐ殺されちゃう隼人クンね(ただ、これで出番は終わりではない)。でも、すっごくしぶとくて、何度沼に沈めても浮き上がってくるんで、本当は可哀想なんだけど、思わず笑ってしまう。
鶴彦はこの後、スッポンから現れる。黒衣が差し金の人魂をもち花道を誘導するが、人魂で隼人クンを襲ったり、さかんにイタズラを仕掛けるのが可笑しい。

種ちゃんはワルい奴なんだけど、私は種ちゃんの鼻の形が好きで、顔の中心ばっかり見ていた気がする。この辺りで亀三郎、梅枝、歌昇、新悟、種之助、廣太郎によるだんまりがあって、形をきれいに決められる人たちだから、楽しめた。

以下、続く。

 

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2012年8月14日 (火)

第4回趣向の華 2日目昼の部②:ぼろぼろ泣きの白虎隊からにぎやかなフィナーレへ

811日 趣向の華2日目昼の部(日本橋劇場)

「袴歌舞伎 白虎隊」
明治41年明治座初演、大正5年歌舞伎座再演、以来3度目の上演がこの袴歌舞伎だそうである。
とにかく泣かされたわ。袴歌舞伎でこんなに泣くなんて。だって、今までは笑いが主だったんだもの。それに、衣裳をつけない、若手のまだまだ未熟なところもある演技だとしても、これほど心に迫るものをぶつけてくるとは!! あちこちからすすり泣きが聞こえてくる。
白河家では長男・千太郎(壱太郎)が病の床に就いており、戦に加われぬ無念を嘆いている。そこへ、江戸の相撲取り・朝日嶽鶴之助(萬太郎。萬ちゃん、いつだったかも何かで相撲取りやったような記憶があるが…。小柄なのにねえ)が訪ねてきて、かつて恩を受けた会津の殿様のお役に立ちに来たと告げる。
すると今度は母親お道(高麗蔵)の兄・小左衛門(亀三郎)が訪ねてきて、15歳以上17歳以下の男子は白虎隊と名付けて出陣することになったと告げる。項垂れる千太郎の気持ちを察した弟・万次郎(米吉)が必死で自分は15歳であると訴える。万次郎は本当は14歳なのである。年齢を1つ偽って兄のかわりに白虎隊に入ろうとする万次郎を伯父は褒め、生き甲斐のない千太郎は自害したいと言い出しみんなに止められる。米ちゃんの兄を思ういじらしさ、弟を誇りに思いながら身を捩って無念さを表す壱太郎クン。もう、ここですでにウルウル。
お茶をもってきた女中のお松(梅之)も、千太郎の自害などとんでもないと止め、さらにはお家のことで仕方ないけれど、こんな前髪の子供まで駆り出して刀や鉄砲の楯にするとはあんまりだと、怒りを込めて嘆く。梅之さんの心を籠めた丁寧なこの重く悲しい言葉に、涙。武士の妻であり武士の母親でもあるお道も、覚悟を見せ、口では息子をほめながら、内心はお松と同じ思いのようである。
そこへ見舞かたがたやってきた千太郎の友人たち。万次郎の決意を聞いて感心するものの、幼い万次郎の刀の腕は信用されていない。万次郎は自分の手の内を見てくれと言って、従兄・滝沢七之丞(歌昇)と手合せすることになる。相手は免許の腕前。かなうわけもないが、七之丞は万次郎の腕をほめる。そんな万次郎を見ているうち、たまりかねた千太郎はふらつく体を奮い立たせて木刀を持ち、森田八弥(隼人)と手合せをする。意外にも八弥が危うくなり、河村雄三郎(種之助)が助太刀に入る。千太郎は病がどこかへ吹き飛んでしまい、すっかり元気を取り戻し、喜び勇んで白虎隊に加わるのであった(壱太郎クン、決してコーフンせずに、気持ちが体を凌駕するこの変化をきちんと見せていた。死に赴くとわかっていても、白虎隊に加われる喜びを私も共有した)。そんな息子をそっと見守る母…。
高麗蔵さんは素顔でも女形としてまったく違和感がない。静かなたたずまいで夫に死なれ家を守る武家の女を演じて好もしい。
場は替わり、戸の口の原。深い霧の中、白虎隊の若者たちが出陣のときを待っている。佐藤源之助(梅枝)は昨夜眠れなかったから眠くなってきた、戦が始まったら起こしてくれと言って横になる。やがて霧が晴れ、いよいよ戦が始まった音が聞こえてきた。起こそうとしてもぐっすり眠って目覚めない源之助1人を置いて仲間たちは戦場へ向かう。梅枝クンは前日の遊び人といい、豪胆な若武者と普段のはかなげな女形のギャップがありすぎる
ややあって目覚めた源之助の前を町人風情の男が2人通る。蓑の下から覗く彼らの鞘を見咎めた源之助は己の刀を抜く。戦っているうちに仲間が戻る。敵の数も増える。激しい戦闘になる。梅丸クンが太ももを斬られる。種之助クンは昨日に引き続き激しい立ち回りだ。壱太郎クンは槍で戦う。鷹之資・玉太郎クンのかわいい白虎隊戦士、鷹之資クン(平瀬虎吉)が玉太郎クン(黒川元彦)を守りながら戦う姿がいじらしくてはらはらしながら涙涙。7人に囲まれ危ういところへ朝日嶽が駆け付ける。丸太を振り回して大奮闘するが、やがて丸太を奪われ素手で応戦するも、ついには敵の槍に突かれ命を落とす。
飯盛山中腹。見下ろす城は炎に包まれている。「あの中には殿様もござる」。「伯父様もいる」。「父もいる」「母もいる」「姉もいる」「弟もいる」。泣きながら城を見るうちに、鐘が鳴り、彼らはまだ城が落ちていないことを知る。喜びも束の間、この小人数では帰ることも叶わぬ、生け捕りの恥辱を受けるくらいならと、白虎隊の面々は切腹を決意する。城と殿に向かって平伏して別れを告げる白虎隊。自決、差し違え(差し違えがすっごく悲しい。泣けて泣けて)、次々と若い命が絶たれる。御簾内からは「會津磐梯山」の歌が流れている。千太郎は弟の万次郎を抱き、後ろから弟の腹に突き立てた刀に添えた手に力を込める。兄をしっかり見つめながら絶命する弟。すぐに後を追う兄。プレ公演のトークで「兄弟愛を見てください」と2人が言っていたが、涙ボロボロぼろぼろ止め処ない。今思い出しても兄弟の最期、兄弟愛に泣けてくる。源之助が死に、最後に七之助が腹を切る。
飯盛山麓に官軍の大川彦次郎(亀寿)の連隊がやってくる。会津のねばりをほめながらも雪が降らぬうちに決着をつけたい大川。その前を1人の女が通り過ぎようとする。着物に血がついているのを見咎められた女は、静かな怒りと悲しみを込めて白虎隊の死を告げる。女は白河家の女中・お松であった。はじめと終わりで戦の空しさ、戦への怒り、悲しみを抑えた演技で訴えた梅之さんの心情に胸を揺さぶられた。
彦次郎は手下に白虎隊の死を確認させると、見事だとほめ、自分たちもかつては敵と呼ばれたことがあった。今は勝利者となったがいつか又勝利を奪われることがあるかもしれない。歴史は回り灯籠である、としみじみ述懐するのであった。

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2012年8月13日 (月)

第4回趣向の華 2日目昼の部①:耳で味わう酒

811日 趣向の華2日目昼の部(日本橋劇場)
最近、外出によく忘れ物をする。日焼け止め、携帯、筆記用具等々。
今日は、日焼け止め、カメラ、お茶を忘れた。日焼け止めは松也クンの「挑む」の時にやむを得ず買っちゃったので今日はスカーフで防止。お茶はコンビニで買うしかない。カメラは携帯があるが、携帯で写真ってほとんど撮ったことがないので、アップの仕方とかわからず、シャッターチャンスをふいにした。おまけにタイムテーブルとか撮ってもピンボケ。
開演前のアナウンスは前日と同じ、カメちゃん。
「演奏 雨の五郎」
「演奏 連獅子」
「雨の五郎」は前日と同じ顔ぶれ。演奏は前日よりよくなっていたような気がした。前日は玉太郎クンの後ろにプロが控えていて調弦を手伝っていたが、この日は玉ちゃん、自分でやっていた。
「連獅子」は、三味線の歌昇・種之助・米吉が抜け、萬太郎・廣松が加わる。いつも暗譜の萬太郎クンは今回は楽譜からほとんど目を離さず、男寅クンが暗譜で演奏していた。
唄の勘十郎さんは前日、立三味線の染五郎さんの隣に位置していたのに、この日は一番端っこに移動していた。なぜ? 謎
smile
染五郎さんが大薩摩を始めようとした瞬間「こうらいやっ」の掛け声がかかり、染五郎さんが笑いを堪え、それを見た客席も笑い出し、他の出演者も肩をゆすっている。三味線の染五郎さん、色っぽい。

「常盤津 夕涼み三人生酔(ゆうすずみさんにんなまえい)」
お馴染み、勘十郎さんの三味線、菊之丞さんの浄瑠璃は実に耳心地よい。多分、お2人とも好きで好きでたまらないことをやっている喜びが演奏をより高いレベルのものにしているのだろう。
笑い・泣き・怒りの三人上戸のうち、怒りは常盤津秀三太夫師が担当(この怒り上戸がまた、よかった)。毎回、終わると息もできないという菊之丞さんが今年は息がつける、とプレ公演で語ったのはそういうわけ。
舟遊びの雰囲気がよく再現されていて、川風に吹かれながら一杯傾けている様子が目に浮かぶ。新内風のところがとても粋。

今日はこれでご勘弁。

そうそう、ミーハー的余談をひとつ。
松江さんの下のお子さん、お嬢さんなんですが、玉ちゃんとそっくり。おんなじ顔していると言ってもいいほどhappy01 とってもかわいい。お母さん似のようでした。


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2012年8月12日 (日)

第4回趣向の華 1日目昼の部②:目で聞く落語

810日 趣向の華1日目昼の部(日本橋劇場)
「明烏」
菊之丞さん脚本・演出。前々回(第3回)の「真田小僧」に次ぐ、落語モノである(あの時の梅丸クン、利発でかわいかったなあ)。
暖簾と机だけのシンプルな舞台、丁稚(玉太郎)が店先で箒を使っているだけで、ここは大店だなとわかる。主人の日向屋半兵衛(友右衛門)が外出先から帰ってくる。店先にいるのは丁稚と番頭(國矢)だけなのに、他にも大勢使用人がいる雰囲気がある。
これも出かけていた息子の時次郎(萬太郎)が源兵衛(梅枝)・太助(歌昇)に伴われて帰ってくる。実は源兵衛と太助は町内でも札付きの遊び人だが、あまりに堅物過ぎる時次郎を心配した半兵衛が吉原を経験させてくれと2人に頼んだというウラがあったのだ。吉原では時次郎が絶対に行かないことをわかっている2人はお稲荷さんに行こうとだまして、時次郎の支度を店の外で待つ。
半兵衛は話を合わせながら時次郎に種々の心得を授ける。吉原をお稲荷さんに見立てての心得は可笑しさたっぷりなのだが、友右衛門さんが時々セリフに詰まってしまい(おそらく、机の上に載せてあった台本を見ていたであろう)、そのご愛敬も相俟って、客席からも思わず笑いが。こういう雰囲気も趣向の華ならでは、である。
2
人の遊び人ぶりであるが、歌昇クンが腰をひねったり顔を無理やりひん曲げたりして作っているのに対し、梅枝クンはまるで<素>じゃないか、っていうくらい実に自然(本当に<素>だったらコワいぞbearing)。でも、その中に時々女形のまろやかさが滲む。
萬太郎クンもおっとりした堅物ぶりがまったく自然で素直で、こちらも<素>じゃないかと思える。
さて、場は変わって吉原。楽屋暖簾がたくさん掛けられている。それだけで華やかな廓の様子が見事に表されているし、ふだん目にすることのない楽屋暖簾がこんなにたくさん、というだけでも楽しい。また、源兵衛が廓の女将(新悟・拵えをしている。新悟クンは素顔のほうが私は好きかも)に巫女頭になってくれなどと頼んで時次郎をだます打合せをしている間、スッポンから柳の木が出てきたが、これを黒衣が支えていたのが趣向の華らしくてよかった。
未だここはお稲荷さんだと思っている堅物の時次郎は、緊張したから厠へ行きたいと言い、花道を厠へ向かう途中、遊女浦里(梅丸・拵えをしている)とバッタリ。「ぎゃぁ~っ!!」と絶叫する時次郎。さすがの時次郎もここがどこかやっとわかった次第。騙されたと知って、「帰る」と言いだす時次郎。
3人で来たんだから3人揃って帰らないと大門で袋叩きにされる」とウソを言って必死にとどめようとする太助。そのウソがわからなくて話を合わせられない源兵衛。歌昇クンが一生懸命目配せしているのに、まったくニブい梅枝クン(もちろん、役で)。最後は「オレの目を見ろ」で、梅枝クンが歌昇クンと顔つき合わせて睨み合う形でやっと太助の真意を理解。この間の遣り取りがまた可笑しくて、客席大笑い。
すったもんだの末、女将と遊び人2人は何とか時次郎と浦里を別室へ送り出した。
翌朝、2人が時次郎と浦里の部屋へ向かうと、2人は仲睦まじく1つの布団に入っている。その状態を客によく見せるため、布団を載せた板を垂直に立たせたのが何とも可笑しい。2人揃って相方にフられた源兵衛と太助はもう帰ろうと時次郎を促すが堅物だった時次郎、「花魁が足をぎゅっと挟んで離してくれない」と嬉しそう。そんなら自分たちは帰るわと言う2人に時次郎、「大門で袋叩きにされるよ」。
梅丸クンの浦里は、セリフがほとんどなくて表情や動きだけで気持ちを表すという難しい役だが、ウブな時次郎を気に入って可愛く思う様子がきっちり見て取れたし、なんとも愛らしく、しかもこぼれるような色気がある。萬太郎・梅丸の2人が布団に入っている姿も思わず「かっわいい~」と声を出してしまうほど、ぴったり似合いのカップルで、これからもこのコンビで何か芝居を見たいと強く思うのであった。
さて、「明烏」自体はこれでオチがついたのだが、話はまだまだ終わらない。
実は3人が吉原に入る時、1人の侍が誰かに追われている様子であった。それが次の演目の伏線であった、といううまい趣向。
「敵討廓春雨」
前日のプレ公演で舞台稽古を見た演目である。あれからまた稽古をしたのか、本番は流れがよりスムーズになっていた。坊ちゃんたち(廣太郎・米吉・廣松・隼人)は紋付袴、捕手は浴衣に揃いの縞の袴をつけている。種之助クンは小柄ながら狭い舞台で大きく力強い立ち回りを見せた。本当に形がきれいで、見ていて飽きない。ここでの主役は種之助クンではあるが、捕手の面々(八重之・蝶之介・蝶三郎・京珠・京純・京由・錦二郎・やゑ亮)も主役と言っていいほどの活躍であった。これも余計なことだが、やゑ亮クン、身長伸びた?
最後に種ちゃんが「とうざ~い。まず本日の昼の部は」、5人で「これぎり~」。

幕が閉まると染五郎さんが出てきて、御簾内から勘十郎さんと菊之丞さんを呼び、「演奏、芝居、脚本、作曲、プログラムの原稿、全部手作りでやっています。明日も、今日の夜の部もよろしく」と締めて昼の部は終わり。
夜の部は2日間同演目なので、1日目は昼の部だけを見て、2日目に昼夜通しという人が多いようであったが、私もその1人。
それにしても金曜日の昼だからなのだろうか、空席がけっこう目立ったのが実にもったいない!!
<上演時間>「雨の五郎」10分、「連獅子」20分(演奏:13301400)、休憩10分、「筆幸」31分(14101441)、休憩20分、「明烏」47分(15011548)、つなぎ幕1分、「敵討」16分(15491605

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